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【武豊】枠順の違いが勝敗をわけたレース

[週刊大衆05月25日号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
枠順の違いが勝敗をわけたレース


枠順による有利不利は存在するのか?
答えは、間違いなく、YESです。

昨年、日本初の試みとして大きな注目を集めた「有馬記念」の公開抽選を思い出してみてください。馬の性格や戦法によっては、真ん中からやや外目の枠を希望する陣営があるかも!?
と思っていましたが、きれいに内側から埋まっていきました。

「今日のコース状態だと、内外による有利不利は、ほぼ、ないですね」
解説者の方が言われるように、そこまでの差はない……というケースもありますが、この"ほぼ"というのがクセモノ。舞台がGⅠで、力の差がない馬同士が、力の限りを尽くして闘ったときには、この"ほぼ"が天と地ほどの差になることだってあるのです。

あれは2006年5月14日。マイル女王を決める記念すべき第1回「ヴィクトリアマイル」のことです。
走るからには勝ちたいと思う気持ちはどのレースも同じですが、GⅠで、しかも、歴史にその名が刻まれる第1回のレースです。各陣営とも、いつも以上に力が入るのは当然です。

「春に古馬牝馬のGⅠレースを作ってほしい」
かなり前から訴え続けていた僕も同様でした。初代女王を目指し、心は熱く、でも頭は冷静に――優勝するためのシミュレーションを幾通りも考えていました。

そして、レースはほぼ思い描いていた通りに運んでいました。
1枠に入った桜花賞馬、2番人気のダンスインザムードは内ラチ5~6番手を追走。1番人気に推されたNHKマイルCの優勝馬、ラインクラフトは、そのダンスインザムードが見える絶好の位置をキープし、さらにその後、4番人気のディアデラノビア、5番人気のヤマニンシュクル。大外18番枠からスタートした僕とエアメサイアは、レース前半、後方でジッと我慢です。
抽選する段階からレースは始まる!

勝負は最後の直線――読みにも狂いはありませんでした。GOサインを出すタイミングもこれ以上ないという最高の機を捉えたものだったし、それに応えてグンと加速したエアメサイアの走りも完璧でした。

その証拠に、エアメサイアが繰り出した3ハロンの脚は、メンバー中最速となる33秒4のタイムです。
それでも、先に抜け出したダンスインザムードをついに捉えることができなかったのは、東京競馬場、芝1600メートルコースの枠順による差でした。

レース直後、口には出しませんでしたが、「もし枠順が逆だったら……」と、唇を噛んでいました。
しかし、抽選の段階からすでに競馬は始まっていて、決められた枠順、天候、馬場状態など、すべて含めて"競馬"です。

調教師の先生やスタッフ、僕ら騎手は、ライバルだけではなく、目には見えないものとも闘いながら、大きな勲章を目指しているのです。馬同士の力の勝負はもちろん、こんな目には見えない勝負の駆け引きも、愉しんでください。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】枠順の違いが勝敗をわけたレース

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