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ターザン山本が考える猪木イズム「前田日明こそがプロレスラーの中のプロレスラーだ」

[新シリーズ 逆説のプロレス]

ターザン山本が考える猪木イズム「前田日明こそがプロレスラーの中のプロレスラーだ」

“立石のザンパノ”こと、元『週刊プロレス』金権編集長・ターザン山本が語る「前田日明という人間の秘密と謎」とは。

前田日明にはマスコミをビビらす圧力がある。現役を引退したあとも全然それは変わらない。実をいうと、これがプロレスラーの原点なのだ。かつて日本のプロレス創成期の時代では、外国人レスラーはみんな怖いイメージがあった。その怖さを前田は新日本プロレスの道場で学んだ。三つ子の魂百まで。今でも彼はその怖さをプロレスラーのアイデンティティとして引きずっている。

しかし、現代のプロレスに「道場論」はない。道場には鬼コーチがいた。レスラーをめざした入門者は道場に併設された合宿所に入り即、坊主頭にされた。徹底したしごき、練習、いじめは当たり前。そのため夜逃げするものが続出。それに耐え生き残ったものだけがリングデビューできた。

前田はその新日本プロレスの道場が持っていた戦闘集団としての過激な思想にはまった。完全に覚醒した、魂を入れてしまったのだ。その答えは一つしかない。プロレスはなめられたら終わりだ。そのためには、存在自体ですべてのものにプレッシャーをかける。だから前田の前では下手なことは言えない。恐る恐る接触するしかない。言葉を選んで話す。

前田日明こそがプロレスラーの中のプロレスラーだ。「格闘王」というよりも真の「プロレス王」なのだ。「プロレス王」と言ったら誤解されるので「格闘王」と名乗ってきたに過ぎない。本当はどっちでもいいのだ。前田はアントニオ猪木の後継者である。猪木のいい所ともっとも凄い部分だけを受け継ごうとした。

だから前田は猪木批判をした。反猪木の立場をとった。変節してしまう猪木は前田からすると許せなかったのだ。こうして猪木イズムは前田の中に継承されていった。

猪木イズムの最後の実践者、新日イズムの生きた化石。

なぜそれが可能になったのか? その理由は簡単だ。とことんプロレスに惚れ込んだからだ。前田をしてプロレスに惚れ込ませるものが新日本プロレスにはあったのだ。全身プロレスラー、丸ごとプロレスラーとは前田のことだ。ゆえに彼はプロレスを見下す者、あなどる者に対しては容赦しない。本能的にプロレスを守ろうとする。
そんな前田が最近、意外な面を見せて私を驚かせた。2月28日、ディファ有明でおこなわれた「巌流島」の試合。なぜかこの興行を前田は見に来ていた。普通、他人の興行は見に来ないだろう。それなのに自分の方から「行くから……」と関係者に連絡した。やっぱりどんなものなのか興味があったのだろう。

見ると最前列の中央の席に前田はいた。休憩時間、その前田と私は偶然会った。あいさつする。するといきなり「逆だよな!」と言った。え? 何が逆なのか? 「ルールを決めて人を集めるんじゃないよ。その逆だよ」。はじめなんのことかわからなかった。次の瞬間、なんて頭のいい人なんだと思った。巌流島はまずルールと試合方法を実行委員会のメンバーが討論し合って決めた。それから選手をピックアップしていった。ごくごく当たり前のやり方だ。なんの問題もない。

しかし前田の考えは違う。選手を集めたあと、その中で誰がスター候補なのかを考える。それも前田の感覚で吟味する。スター候補が決まったら、その選手に有利なルールは何か? これがいい。そうだ。それに決めよう。こうしてルールは後出しで決められる。スター選手を誕生さすためだ。前田は根っからのプロデューサーだ。マッチメイカーだ。格闘デザイナーだ。前田日明という人間の秘密と謎がやっと一つ理解できた。


文◎ターザン山本
1946年、山口県生まれ。「週刊ファイト」のプロレス記者を務めたのち、ベースボール・マガジン社に籍を移す。87年に「週刊プロレス」2代目編集長に就任すると、同誌を公称60万部の黄金時代へと牽引した。96年同社退職。強烈な個性と風貌で毀誉褒貶が激しい人物。


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「新シリーズ 逆説のプロレス」(双葉社スーパームック)より引用

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