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秋の夜長に観たい!日本人が見るべき「傑作時代劇」厳選39作品

[週刊大衆09月28日・10月05日号]

秋の夜長に観たい!日本人が見るべき「傑作時代劇」厳選39作品

芸術の秋! この大型連休は出費をなるべく減らしてDVDの映画でも借りて、家でのんびり過ごしたい!

日本映画を語るなら、欠かせないのが時代劇。そこで今回は、歴代の時代劇スターを振り返りつつ、現在、DVDで鑑賞できるオススメ作を紹介していこう。

まずは東宝が世に送り出した"世界のクロサワ"作品の数々を。その最大のスターは三船敏郎だった。日本映画に精通する映画ライターの藤木TDC氏は、『用心棒』(1961年=公開年=以下同)と、その続編『椿三十郎』(62年)こそ必見作だと力説する。
「黒澤映画はちょっと説教臭いと敬遠する人がいますが、この2本は誰が見ても楽しめる娯楽作。まとめて見ると一層楽しめます」

いずれも、ふらりと現れた浪人が、その剣の腕と知略をもって、直面した事件を解決するというのが物語の骨子だ。三船は両作共通の主人公を演じている。
「この無骨で凄腕の浪人役は三船の当たり役。その後、黒澤作品以外でも同じような人物を、たびたび演じていきます」(藤木氏)

2作品の大きな特徴は、時代劇の様式美を否定した点。黒澤監督は『用心棒』で、刀で斬られた人物が血を流し、苦悶の表情を浮かべるというリアルな描写を取り入れたのだ。そして、リアル路線が継続された『椿~』では、クライマックスの決闘シーンが話題になった。これから見る方のために詳細は省くが、シナリオには以下のように書かれている。
〈これからの二人の決闘は、とても筆では書けない。長い恐ろしい間があって、勝負はギラッと刀がいっぺん光っただけで決まる〉

邦画アナリストの三角錦一氏は、こう語る。
「三船と仲代達矢の決闘シーンは、他の映画会社関係者に"あれをやられたら、ウチの時代劇を誰も見なくなる"とショックを与えたといわれています」

三角氏が、黒澤作品でもう1本プッシュするのが、『隠し砦の三悪人』。
「これもメッセージ性のない冒険活劇。娯楽映画のさまざまな要素が詰まっています。また、黒澤監督は画作りが素晴らしく、場面ごとに圧倒されます。特に三船が敵を馬で追いかけるアクションシーンはスゴい」

余談だが、『用心棒』をもとにマカロニ・ウエスタンの『荒野の用心棒』が作られ、またジョージ・ルーカスが『隠し砦の三悪人』を参考にして『スター・ウォーズ』を撮ったのは有名な話。

一方、松竹は、歌舞伎を運営している強みで梨園の看板役者を集めた大作を残している。『大忠臣蔵』(57年)が、それだ。
「大石内蔵助を演じるのは二代目市川猿之助。当代の曽祖父ですが、"香川照之のひいおじいさん"というほうが通りがいいかも。そのほか、松たか子の祖父の八代目松本幸四郎(白鸚)、先日亡くなった三津五郎の祖父の坂東蓑助、若き日の当代松本幸四郎、市川猿翁など、歌舞伎役者だけでも豪華絢爛ですが、現代劇から高田浩吉、近衛十四郎など、単独で客が呼べるスターがこぞって出演してます」(昭和文化研究家のミゾロギ・ダイスケ氏)

歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』をベースに作られたこの作品だが、特筆すべきは女優陣だという。
「歌舞伎では女形(おんながた)が演じる役を、本物の女優たちが演じているんです。初代水谷八重子、山田五十鈴、瑳峨美智子ら女優陣が演技の火花を散らすシーンも注目です」

時代劇を最も得意としていた映画会社は東映だ。そこには片岡千恵蔵、市川右太衛門という2大スターがいた。ミゾロギ氏が言う。
「戦前から『鴛鴦(おしどり)歌合戦』(39年)というオペレッタ時代劇にも出ているほどで、千恵蔵は役や作品の幅が広い。白塗りの剣豪役が多かった右太衛門と対照的」

千恵蔵作品の中では、あえて全盛時が過ぎてからの『十三人の刺客』(63年)を推したい。
「東映が『七人の侍』の影響を受けて作った作品です。リアリティ重視の集団抗争劇で、今日のヤクザの抗争劇と重ねて見ることもできます」(藤木氏)

2大御大より少し若いスターに、迫力のある立ち回りで人気だった近衛十四郎(松方弘樹の父)がいる。彼の代表作の一つが『忍者狩り』(64年)だ。
三角氏は「当時流行っていた集団抗争劇ですが、近衛十四郎と対峙するのは顔を一切出さない忍者集団。得体の知れない敵というのは画期的でした」と分析。

近衛よりもさらに若い年代のスターでは、大川橋蔵、中村錦之助が双璧だ。
橋蔵主演作では、『新吾十番勝負』シリーズが一見の価値アリ。
「橋蔵の華麗な立ち回りは見ていて気持ちいい。現在、DVDをレンタルできるのが一部の作品だけなのが残念です」(ミゾロギ氏)
『仁義なき戦い』の時代劇版?

錦之助主演作では、吉川英治の原作を映画化した「宮本武蔵」シリーズが光る。『宮本武蔵』(61年)、『~般若坂の決斗』(62年)、『~二刀流開眼』(63年)、『~一乗寺の決斗』(64年)、『~巌流島の決斗』(65年)の5部作である。
「内田吐夢監督の方針で、錦之助の俳優として、人間としての成長をそのまま映画にも反映させるべく、1年に1本という贅沢な作り方でした。作品ごとに武蔵というキャラクターの成長が明確に出ている。錦之助という俳優のすごみを実感できます」(三角氏)

ミゾロギ氏が「錦之助の演技の幅の広さを知るには必見」と推薦するのが『真田風雲録』(63年)だ。真田十勇士の活躍をギャグや歌、SF的要素を交えて描いたアクション喜劇。
『宮本武蔵』と同時期の作品なのだから驚きだ。

その後、時代劇は60年代中盤をピークに斜陽化。東映は主軸を任俠映画に移す。
それも下火になると、時代劇復活を掲げ、萬屋錦之介と改名していた往年のスターを呼び戻した。『柳生一族の陰謀』(78年)は錦之介をはじめ、千葉真一、松方弘樹、西郷輝彦、丹波哲郎、山田五十鈴、そして三船敏郎らが出演のオールスター大作だ。

監督は『仁義なき戦い』の深作欣二。となれば、ただの時代劇にはならない。
「ヤクザの抗争劇を将軍家の後継者争いに置き換えた、いわば『仁義なき戦い江戸死闘篇』です(笑)」と三角氏。続けて、
「柳生但馬守役の錦之介は旧来の時代劇のような芝居を通し、深作監督は渋い顔をしたとか。錦之介は作品を面白がった反面、古典的な時代劇を守ろうとしていたのかもしれません」

ラストには、まさかのどんでん返しが待っている。
「そこで錦之介の芝居が思わぬ効果を生んでいます。監督にとっても、嬉しい誤算だったようです」(前同)
女優陣が惜しげなく肌を披露

この作品の大ヒットを受けて、深作&錦之介コンビで製作されたのが『赤穂城断絶』(78年)だ。
「深作監督は普通の忠臣蔵にしたくなかった。そこで錦之介が吉良役、金子信雄が大石役という配役を考えたと聞きます」(同)

だが、実際のキャストはその反対となった。
「大石内蔵助を演じるのが念願だった錦之介は吉良役を受け入れられず、むしろ王道の忠臣蔵を望んだといいます」(同)

その複雑な状況が、この作品のミソである。
「『柳生一族~』の時点で、深作監督と錦之介には軋轢があったといいます。『赤穂城~』はぜひ、現場の緊張感を想像しながら見てください」(ミゾロギ氏)

東映と並ぶ時代劇の宝庫に大映がある。そのスターといえば勝新太郎だ。
勝新の代表作『座頭市』シリーズを楽しむには、第1作にして最高傑作の呼び声も高い『座頭市物語』(62年)から見るべし。天知茂演じる剣豪・平手造酒との友情を描いている。
「初期の作品は、座頭市がすべてを達観したヒーローになっておらず、人間的な葛藤もあります。それがまた魅力です」(藤木氏)

勝新は67年に勝プロを興し、積極的に夢の共演を実現させていく。
『人斬り』(69年)では日活の石原裕次郎、黒澤映画の常連・仲代達矢、さらに俳優活動もしていた作家・三島由紀夫が共演。勝と三船の共演作もある。
『座頭市と用心棒』(70年)だ。あの『用心棒』『椿三十郎』の主人公を彷彿とさせる浪人が、座頭市と対決する! 大映にはもう一人、市川雷蔵がいた。代表作「眠狂四郎」シリーズの中から第4作『眠狂四郎女妖剣』(64年)がオススメだ。
「このシリーズは途中からエロス路線にシフトします。これは、その第1弾。大映女優陣が惜しげもなく肌を露出します」(藤木氏)

時代劇スターは男ばかりではない。昭和の歌姫・美空ひばりは各映画会社で多くの作品に出演している。
松竹作品『七変化狸御殿』(55年)は、多数製作された「狸御殿」もののオペレッタ喜劇の一作だ。芸達者な出演陣の歌や踊りを理屈抜きに楽しみたい。

現代のスターが主演した作品も1本紹介しておこう。
木村拓哉が失明してしまった若き侍を演じた『武士の一分』(06年)だ。
「山田洋次監督が、"キムタクは何を演じても同じ"という評価を一掃する作品に仕上げています。キムタクの妻役の檀れいの美しさだけでも見る価値あり」(ミゾロギ氏)
合戦シーンは邦画史上屈指!

さて、ここまでは歴代スターの主演作を並べてきたが、映画史の中には企画ありきで作られた作品も。最後に、その系統の時代劇を2本紹介しよう。

『大魔神』(66年)は、当時流行していた特撮を時代劇に取り入れる、というアイデアから生まれた作品だ。手作り感あふれる特殊撮影が楽しい。

半村良の原作を映画化した『戦国自衛隊』(79年)は角川映画の1本。
自衛隊の一個中隊が戦国時代にタイムスリップし、川中島で武田信玄軍と戦うという荒唐無稽な物語で、純粋な時代劇とは言いがたいが、合戦シーンは邦画史上でも屈指の出来。
「20世紀の最新兵器が、戦国時代の雑兵が繰りなす人海戦術で次々に倒されていくさまは迫力十分。武田勝頼を演じた若き日の真田広之が、ヘリから飛び降りるスタントを見せています」(前同)

以上、日本が誇る痛快時代劇39本。どちらも傑作間違いナシですゾ!

秋の夜長に観たい!日本人が見るべき「傑作時代劇」厳選39作品

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