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【武豊】小倉で躍動したメイショウカイドウ

[週刊大衆2016年08月15日号]

 走るのは好きだけど、球技は得意じゃない。一人でコツコツ作業するのは何時間でもOKだけど、営業はどうも……と、人に得手、不得手があるように、サラブレッドにもまた、得意な競馬場と、苦手な競馬場があります。

 右回りコースは気持ちよく走るのに、左回りになった途端、走りが鈍くなるのがその一つ。坂のあるコースと平坦コース。中にはスタンドとコースの距離……近すぎて、声援や怒声に驚く馬がいたり、その逆で、「どうだ、オレの走りはカッコいいだろう」とでも言うように、その颯爽と走る姿を見てほしくて、いつも以上の力を発揮する馬もいます。もっとも言葉が通じないので、あくまで僕の印象ですが(笑)。

 その筆頭が、“小倉の鬼”と呼ばれたメイショウカイドウでした。地方を含め、43回走って挙げた白星は全部で11。このうちの8つが小倉でした。

 一昨年、JRA60周年記念行事として全国10場の記念レース名を募集したところ、エアグルーヴ(札幌競馬場)、ウオッカ(東京競馬場)、オルフェーヴル(中山競馬場)、ディープインパクト(京都競馬場)、サイレンススズカ(阪神競馬場)という名馬の中に入って、小倉競馬場で堂々選出。「小倉記念」当日の第10レースが、「玄界灘の風雲児メイショウカイドウカップ」として施行されたほど小倉で強烈な走りを見せ、競馬ファンに愛された馬。

 小倉を舞台に行われる重賞レースは、「小倉2歳ステークス」と「小倉サマージャンプ」を除くと、「小倉大賞典」「小倉記念」「北九州記念」の3つ。これを総称して、“小倉三冠”と呼んでいますが、過去にこれを達成したのは、アトラス、ロッコーイチ、ミヤジマレンゴとメイショウカイドウの4頭だけ。一つ勝つごとに負担重量が増えていく中で、すべて勝つのは至難の業です。それを同一年で達成した彼は、本当に凄い馬でした。

 06年に、「北九州記念」が距離1800メートルから1200メートルに短縮されたことで、“小倉三冠馬”と呼ばれる馬は、彼が最後になるんだろうなと思います。でも、なぜ小倉で、これだけ無類の強さを発揮できたのか? 裏返して、小倉以外の競馬場では、なぜ、勝てなかったのか⁉ 理由は、今もって謎です。改めて思い返してみても、疑問符が頭の中を飛び回っています。

 小倉では、「本当にこのコースは強いですね」というコメントが並び、逆に他の競馬場では、「分かりません」。「負けた理由? 理解不能です」というものばかりだった気がします(苦笑)。現役を引退した後、彼は思い出の小倉競馬場で誘導馬に転向。08年の披露目式には、松本好雄オーナー、坂口正大先生と並んで、僕も出席。現役時代はイレ込むことが多かった彼が、誘導馬になった途端、実に堂々としていて、落ち着いているのに驚いたほどです。そして――彼は今も、小倉で元気に誘導馬を務めています。

■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】小倉で躍動したメイショウカイドウ

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