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稀勢の里の“綱取り”以外にも何かが起こる!? 「大相撲秋場所」はここに注目せよ!!

[週刊大衆2016年09月19日号]

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稀勢の里の“綱取り”以外にも何かが起こる!? 「大相撲秋場所」はここに注目せよ!!

「暑さ寒さも彼岸まで」というが、今年の両国は真夏日以上の熱気。ファン待望の日本人横綱の他にもこれだけのトピックがあるのだ!

「秋場所や退かぬ暑さの人いきれ」 俳人で作家の久保田万太郎がこう詠んだように、残暑の中で行われる大相撲秋場所には独特の風情がある。9月11日、今年も東京・両国国技館で秋場所が初日を迎える。見どころといえば、なんといっても3場所連続で綱取りに挑む大関・稀勢の里(30)だろう。

「先場所は最後まで優勝争いに加わりながら、12勝3敗。13勝2敗で8度目の優勝を飾った横綱・日馬富士に及びませんでした。ここ3場所の勝ち星は13、13、12。安定感は抜群ですが、優勝しないことには横綱昇進も夢のまま終わってしまいかねません」(スポーツ紙相撲担当記者)

 そのあたりは稀勢の里本人も重々承知しているようで、8月29日の秋場所新番付発表後の会見では、「いつも(白星が)一番足りない状態で終わっている。自分から取りに行くつもりで、気持ちを引き締めていきたい」と、決意を新たにする場面が見られた。右足かかとを痛め、夏巡業の前半を休んだ稀勢の里だが、「痛みはもうないし、状態はいい」(本人)という。

「ここ一番で勝てないのは、やはり精神面の弱さでしょうね。近年の稀勢の里は白鵬にも分がいいし、綱を張れるだけの力はついてきた。後は、とにもかくにも優勝することです」と言うのは、相撲評論家の三宅充氏。

 日本人横綱が誕生すれば、98年に昇進した三代目若乃花以来、18年ぶりとなるだけに、稀勢の里の初優勝は相撲ファンの悲願といっていいだろう。「八角理事長に横綱昇進を推挙する役目の横綱審議委員会も、最初は“14勝以上の高い星を残しての優勝が条件”だったのに“優勝すれば勝ち星の数は関係ない”に変わってきた。委員の中には“優勝なしでも12~13勝の星を挙げれば推挙してもいいのではないか”という極端な意見の人さえいるという話です」(スポーツ紙記者)

 好角家で知られる漫画家のやくみつる氏は次のように言う。「場所ごとに、どんどん横綱昇進のハードルが低くなってますね。“何がなんでも日本人横綱を”という相撲協会の強い思いを感じないわけにはいきません。逆に、秋場所で綱取りに失敗したら、振り出しに戻ることにもなりかねない。新番付の発表時に稀勢の里は珍しくニコニコしてましたが、あれは、平常心を保つよう自らに言い聞かせているようにも見えました」

 その稀勢の里に立ちはだかる大きな壁が、やはり横綱・白鵬(31)だ。史上3人目となる幕内通算1000勝へ、残り3勝と迫っているが、「現在、秋場所休場の可能性が浮上しています。名古屋場所9日目で勢に敗れた際、右足親指を負傷したんですが、これをかばっているうちに、左膝に負担がかかったといいます。部屋の稽古にも姿を見せず、階段を上るにも、腰を曲げた状態だそうで、宮城野親方も“(休場のための)診断書を提出するかもしれない。今の状態なら十分休んだほうがいい”と発言しています」(前出のスポーツ紙記者)

 少し前までは盤石の強さを誇っていた白鵬だが、先場所は終盤に大きく崩れ、10勝5敗。ここ最近、カチ上げ(ヒジ打ち)やダメ押し、はたまた猫だましなど、なりふり構わぬ相撲で勝ちにいくことが多くなった。「これは白鵬の衰えの表れ。どの力士にも優勝のチャンスがあると見ていいでしょう。本命不在の戦国場所になりそうです」(前出の三宅氏)

 とはいえ、油断は禁物。先場所で稀勢の里との優勝争いを制した日馬富士(32)に加えて、怪我で途中休場した鶴竜(31)も復帰。稀勢の里がどう立ち向かうかは大いに見どころだ。

 一方、大関陣は稀勢の里を除く3大関に元気がない。昨年の9月場所で右膝のじん帯と半月板を損傷した照ノ富士(24)は、今年初場所で右鎖骨骨折、その後、左膝の内視鏡手術を受けるなど、満身創痍。先場所は8勝7敗で、かろうじてカド番を脱した。

 さらに、残る豪栄道(30)と琴奨菊(32)は、揃ってカド番という体たらくだ。「ケガさえなければ、照ノ富士は横綱に一番近い大関と言えるんですがね。豪栄道と琴奨菊は、残念ながら年齢的にも、今より上に行くことはないかもしれません」(三宅氏)

 うって変って楽しみなのは、東西の新関脇。先場所、小結で11勝し、3大関を倒す活躍で技能賞を受賞した高安(26)は東の関脇に。先場所5日目、白鵬の右からのカチ上げを巧みにかわして左の小手投げで宙に舞わせ、連勝を33で止めて敢闘賞を受賞した宝富士(29)は西の関脇となった。

 そもそも、9月場所は長期に及ぶ夏巡業後の本場所であるため、「夏の間に力をつけ、大きく化ける若手力士が多い」(相撲専門誌記者)と言われる。「先場所、宝富士が白鵬を倒して同じ伊勢ケ濱部屋の日馬富士を援護したように、秋場所では高安が田子ノ浦部屋の兄弟子・稀勢の里をアシストするような場面が見たいですね」(やく氏)

 練習熱心で稽古量も豊富なことで知られる新関脇2人が台風の目になるようなら、秋場所はますます面白くなりそうだ。「一時は若手ホープといわれながらケガに泣かされ、幕内ギリギリを行ったり来たりしている遠藤、どうにもメンタルの弱さを克服できない逸ノ城らに代わって上位陣に食い込むことができれば、いよいよ世代交代の目が出てきますよ」(前出のスポーツ紙記者)

 そして、さらなる新世代の台頭も見逃せない。学生相撲出身の宇良(24)は昨年の3月場所が初土俵ながら破竹の進撃を続け、十両2場所目の先場所で11勝。2場所連続で二ケタ勝利を上げ、秋場所は東十両筆頭にまで昇進し、幕内入りが見えてきた。

 中学までは相撲とレスリングをやっていた宇良はレスリングに由来する居反り、撞木(しゅもく)反りといった珍しい技を得意とする。「173センチと小柄なことから“技のデパート”といわれた舞の海になぞらえる向きもありますが、実は宇良は突き、押しにも力強さがある正統派。居反りにくると思わせて、しっかり前に出る相撲が取れるところが素晴らしいです」(やく氏)

 ところで、この秋場所は7月31日にすい臓がんで亡くなった先代の九重親方(元横綱・千代の富士=享年61)の死後、初めての本場所となる。白鵬をはじめ多くの力士や親方衆が大横綱を偲んで追悼のコメントを発表したが、新入幕を果たした弟子の千代翔馬(25)も、心中期するものがあるに違いない。

「弟子に厳しかった先代の九重さんですが、モンゴル出身の千代翔馬には優しく接していましたね。千代翔馬は幕内最軽量の130キロ。そんなところも小兵ながら鋭い取り組みで“ウルフ”と呼ばれた先代を彷彿させるところがあります」(スポーツ紙記者)

 その先代九重親方も、かつて秋場所では、ライバルとの名勝負を繰り広げている。83年、千代の富士(当時)はこの場所から新横綱となった隆の里と、千秋楽に全勝同士で優勝決定戦。隆の里が千代の富士を下し、双葉山以来45年ぶりとなる新横綱優勝を果たした。

「糖尿病を抱えながら30歳11か月で横綱に昇進した遅咲きで“おしん横綱”と呼ばれた隆の里ですが、千代の富士との対戦成績は通算16勝11敗という“ウルフキラー”。千代の富士の横綱昇進後で言うと11勝2敗と、圧倒しています。ちなみに、稀勢の里も今年で30歳。同じ年で横綱に昇進した入門時の師匠・隆の里にあやかって綱取りを決め、“(モンゴルの伝説の)蒼き狼の血を受け継ぐ”と自ら称する白鵬を破って“新ウルフキラー”といきたいところです」(前出の専門誌記者)

 また、先場所、前頭10枚目で12勝して優勝争いに加わり、敢闘賞を受賞した貴ノ岩(26)も、注目力士の一人。秋場所では東前頭3枚目まで番付を上げ、貴乃花部屋の出世頭となった。

「モンゴル出身の彼は、8歳で母を亡くした苦労人。師匠譲りのけいこ熱心さが実を結び、地力がついてきたので、秋場所で初対戦する横綱・大関陣にひと泡吹かせるかもしれませんよ」(専門誌記者)

 そんな貴ノ岩の師匠・貴乃花親方は、実は現役時代、秋場所にめっぽう強かった。1994年から98年までの5連覇(うち全勝3回)を含め、22回の優勝のうち6度を秋場所で飾っているという“秋場所男”だったのだ。

 そして、平成の大横綱が最後の輝きを放ったのも、やはり秋場所だった。01年の夏場所で右膝半月板を損傷しながら鬼の形相で優勝し、当時の小泉純一郎首相の「痛みに耐えてよく頑張った! 感動した!」という名言を引き出した貴乃花だが、その代償は大きく、そこから7場所全休。進退をかけて出場した02年秋場所の9日目に、当時“昇り竜”であった新大関・朝青龍と激突した。

「かつて自身が、千代の富士を破って引退へと導いた相撲を彷彿させるシチュエーションでしたが、この取り組みではバチバチの突っ張り合いの末、貴乃花が上手投げで勝利。しかし、ともに土俵下に転げ落ちた際、膝の故障が悪化し、翌11月場所を全休。明けた初場所で引退し、日本人横綱は途絶えたんです」(前同)

 つわもの栄枯盛衰、多くの兵たちが台頭しては去って行った土俵の上で、この秋場所は、どんな名勝負が繰り広げられることだろうか。

 それでは、これにて。制限時間いっぱいです!

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