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木下昌輝(作家)「作家になったのは、自分を使った実験」人と違うことをする人間力

[週刊大衆2017年12月11日号]

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木下昌輝(作家)「作家になったのは、自分を使った実験」人と違うことをする人間力

 小説家をしてますけど、大学は文学部ではなく理工学部建築学科を卒業しているんです。高校時代から小説を書きたいと思ってて、それを話したところ、当時の友人が「小説家は引き出しが大切らしい。引き出しがなくなったらエロ小説しか書かせてもらえなくなるぞ」って脅してきて(笑)。嫌いではないですけど、いろいろ書きたいなと思って理系と文系の中間といわれる建築学科を選んだんです。

■『戦国24時 さいごの刻』は歴史小説の宿命を逆手に

 この選択は、作品にも影響していると思います。建築って、切り口やコンセプトがなきゃいけなくて。文章を書く前に、歴史をどういう切り口にするか。そこから入りますね。たとえば歴史小説では結末が最初に知られているという宿命も抱えています。『戦国24時 さいごの刻』ではそれを逆手に取って、“最後の部分”に焦点を当てました。

■豊臣秀吉の婚活、就活、妊活、終活

 今度出す『秀吉の活』では、豊臣秀吉を婚活、就活、妊活、終活のように、「活」を通して描いています。自分で言ったら恥ずかしいけど、戦国武将をこういうふうに書くのって他になくて、一番のアピールポイントですかね(笑)。朝鮮の虎肉を食べて滋養強壮に活かした部分は「妊活」につながってるし、今川家から織田家に仕え直す部分は「就活」、当時にあっては珍しく恋愛結婚をして「婚活」していたりと、秀吉は現代的な人だと思ったんですよね。だから、この作品を歴史小説とは考えていないんですよ。

 それと、今回は秀吉の明るい前半に重きを置いて、後半の“暗い部分”は駆け足にしています。肉屋さんが余計な脂身を切るように、良い所だけを書きました。汚い部分には目をつぶっていて、秀吉には読んだ人を元気づけるよう、21世紀で役立ってほしいなと思います(笑)。

 でもそう言いつつ、来年出す本では秀吉がめっちゃ悪者で、『秀吉の活』とは全然キャラクターが違います。2冊で、良い秀吉とブラック秀吉の両方を楽しんでもらえたらね、ってアピールしてます(笑)。

■歴史小説では司馬遼太郎に勝てないと思ったが…

 最初は歴史小説を書こうとは思ってなかったんです。時代モノは教養も知識も必要で、どうしても敷居が高いですからね。それに、高校、大学の時に司馬遼太郎さんにハマってよく読んでましたけど、これは勝てないなと。でも、司馬さんを含め他の人と逆のことをやればどうにかなるかもと。司馬さんが天の上から俯瞰するようにして書くなら、僕は蟻の視点から書こうと。それに、先にやられてない限りは、アイデアは減点されないじゃないですか。だから、確実に加点されていく部分は押さえていく。

■大学卒業後、ハウスメーカーに就職し、フリーライターになって…

 大学を卒業して、ハウスメーカーに就職して、フリーライターになって。作家になるまでに時間はかかったけど、なるべく人と違うように生きて引き出しを増やしたいなと思ってやってきたのも、そういう部分があります。自分を使った実験ですよね。成功するか分かんないけど、どうなるんやろうと。それに関西人なんで、失敗しても笑い話にできる。

 あと、昔ライターをしていたので、人に話を聞くのを大事にしていますね。文章で資料を読み込むことも大事なんですけど、それだけでは、もっと読み込んでいる先輩作家の皆さんに勝てないですからね。だから、古戦場の観光ツアーにも参加したりもしますよ。

■『宇喜多の捨て嫁』でいきなり直木賞候補に

『宇喜多の捨て嫁』(文藝春秋)は、初めての書籍で、いきなり直木賞候補になったんですけど、本になるまでに2年かかってるんです。だから、これでは作家はやっていけんなぁと思ったんです。それで、出版と同時に就職活動を始めたんです。具体的には、専門学校に通い始めてDTPの勉強をしたんですよ。そしたらその勉強中に、「直木賞候補になりました」と連絡があって、「えーっ」って驚きましたね。しかも、職業訓練学校の卒業式の日が、直木賞の選考日で。これは受賞するやろとストーリーを頭の中で描いてましたら、そううまくいきませんでしたね(苦笑)。

 普段、原稿は昼間に書いてます。朝8時とか9時に起きてね。いつ仕事がなくなっても、社会復帰できる準備はしています(笑)。

撮影/弦巻勝

木下昌輝(きのした・まさき)
1974年、奈良県生まれ。近畿大学理工学部建築学科を卒業し、ハウスメーカーに勤務後、フリーライターとして活動する。2012年に発表した『宇喜多の捨て嫁』が第92回オール讀物新人賞を受賞し、直木賞候補にも選出。その後、『人魚ノ肉』、『天下一の軽口男』、『戦国24時 さいごの刻』などを上梓し、今年2月発売の『敵の名は、宮本武蔵』は山本周五郎賞、直木三十五賞、山田風太郎賞の候補作となる。

木下昌輝(作家)「作家になったのは、自分を使った実験」人と違うことをする人間力

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