■マスコミの取り上げ方にも「東西格差」が存在する

『純情きらり』で主演を務めた宮崎は20歳の新人女優。かたや『芋たこなんきん』主演の藤山は舞台を中心に活躍するベテラン女優で、47歳だった。

「マスコミは作品の評価よりも、宮崎さんの可愛さを持ち上げて高評価していましたが、藤山さんに関しては“史上最年長ヒロイン”といったところばかりを取り上げていました。

 こうした差が生まれるのは、AKは朝ドラ制作チームの人数が多く、マスコミ対応に割くことができる人員も多い一方で、BKはそれに比べると小規模なのが原因かもしれません。さらに、記者さんたちの“癖”なのか、忙しくて朝ドラ自体を視聴していないのか、報道は“ヒロインの可愛さ、若さ”や視聴率にフォーカスしがちな傾向があります。AKは鳴り物入りで人気の女優さんを起用することが多いので、報じる側としてもやりやすいのではないでしょうか」

 広瀬すず主演の朝ドラ『なつぞら』は朝ドラ100作記念作品、黒島結菜主演の『ちむどんどん』は沖縄本土復帰50周年記念作品だが、「“記念作品”と銘打った、気合が入った朝ドラも東京制作が多い」と田幸氏は話す。

「AK制作朝ドラは広報や取材対応がしっかりしている一方で、事務所やモデルとなった人物とのお付き合いが多いからなのか、AKの朝ドラでは“純粋にいい作品を作る”ことができていない場合があります。“記念作品”と銘打って、人気の女優さんを起用して、“絶対に視聴率を獲ろう”という制作チームの気合が空回りしてしまうことも……」

『なつぞら』はヒロイン・なつの為に全ての物事が都合よく動いていく展開が批判されたり、『ちむどんどん』は通常起こるとは考えづらい金銭トラブルや暴力沙汰が多発し、不評を買ったりしていた。

「昔から朝ドラを熱心に観ている層にはBK朝ドラのほうが高い評価を得ていることがあった一方、視聴率やヒロインの人気など、表面的な部分では“AKのほうがいい”と言われがちでした。

 マスコミによるAK作品・BK作品の取り上げ方に差があった昔と比べると、SNSの利用の増加などで視聴者が感想をシェアし、“AKよりBKのほうが面白いよね”という意見が浸透してきているのではないでしょうか」

 直近のAK制作朝ドラ『ちむどんどん』では、視聴者によって「ちむどんどん反省会」と名付けられた批判、矛盾の指摘などがSNS上に数多く投稿されていた。

 その一方で、BK制作で現在放送中の『舞いあがれ!』は日々を丁寧に描いて高評価を得ている。来年以降の朝ドラにも、「東西格差」が表れるのだろうか――。

田幸和歌子(たこう・わかこ)
ドラマライター。様々な媒体でドラマに関するコラムを連載しており、俳優や脚本家、ドラマ制作現場の取材なども行っている。現在は朝ドラ『舞いあがれ!』の毎週レビューを『毎日が発見ネット』で連載中。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinkiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)がある。
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