■山路さんの「死」の捉え方

――悪役としての経験や、演技の表情の作り方なども影響しそうですね。

 そう、だから善人をやるときが大変なんですよ。今回の『時をちぎれ』では、かっこいい将軍様をやろうと思ったら悪そうになっちゃいましたね。コメディなんで将軍様はそんなに悪いやつじゃないですけど、ただ悪く見えます。山路将軍の黒いところも白いところも全部出てますので。

 で、現代にありながら“室町幕府のシステムを模している会社の中で起こる出来事だったり、現代のハラスメントっていう問題もテーマになっていますね。楽しいお芝居になる予定です。

――俳優、声優としてたくさんの「死」を演じてこられたと思いますが、山路さんご自身は死についてどうお考えでしょうか。

 死ということに関して、僕の家系には江戸時代から長男が50歳まで生きたやつがいないんですよ。だから、じいさんもやっぱ45歳で死んで、僕の親父は39歳で死んでるんですよね。

 そういうのがあって、子どものころから"お前も絶対早いからね”って親戚に言われて育ってきて。親父の年を越したときとか、50歳を越すか越さないかのときに、本当に毎日毎日嫌でしょうがなくて……。今度、自分の番はいつ来るんだぐらいに考えてたんですけど、それを過ぎてからはすごい楽になったんですね。生きるというか、生きていくしかないんだなみたいに思うようになって。それまで、若い頃は割と自暴自棄でいた。死ぬということより、生きることを意識しだしたのは、たぶん50歳以降かもしれないですね。

――ありがとうございました。

山路和弘さん

■プロフィール
山路和弘(やまじ・かずひろ)
1954年6月4日生まれ、三重県伊賀市出身。1979年、劇団青年座に入団。俳優、声優、ナレーションなど幅広く活躍。2010年度第36回菊田一夫演劇賞の演劇賞を受賞。2017年度毎日芸術賞を受賞。また、2021年3月、第15回声優アワードで外国映画・ドラマ賞を受賞している。吹替の担当俳優はジェイソン・ステイサム、ウィレム・デフォー、アル・パチーノ、ゲイリー・オールドマンなど多数担当している。

■公演情報
劇団青年座 第250回公演『時をちぎれ』
作:土田英生
演出:金澤菜乃英
2023年1月20日~29日(※23日は休演日)
東京芸術劇場 シアターウエスト
公式サイト:http://seinenza.com/performance/public/250.html

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