山田洋次監督のこだわり

 日本全国を旅する寅さんだが、全体を俯瞰すると旅先に一定の傾向がある。

「山田監督の考えなんでしょうが、真冬に雪が積もった場面は皆無ではないものの、極めて少ない。つまり、北海道や東北で撮影した作品は夏公開であることが多いんです」(高野氏)

 前出の映画ライターは補足する。

「寅さんは、暑い時期は北へ、寒い季節は暖かいところに行きがちです。渥美さんが還暦を過ぎて、年2作公開から正月のみの年1作公開になったことで、西日本ロケ、南国ロケの割合がさらに増えました」

美女との出会いこそ旅の大きな醍醐味!

 寅さんの旅で最大のイベントが、いわずもがな、マドンナとの出会いである。

「寅さんが佐渡で都はるみさん演じるマドンナと親しくなる第31作は『旅と女と寅次郎』(83年)というタイトルです。これこそが、シリーズ全体のテーマだといってもいいと思います」(高野氏)

 映画の専門家である秋本氏に、その視点で推しの作品を教えてもらった。

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