関東地方は梅雨明けし、ついに夏本番……のはずが、なんだか妙に憂鬱(ゆううつ)。

青春時代、開放的な気分に浸り、ナンパに精を出した歓迎すべき太陽の季節が、いつの頃からか、恨めしくなった読者諸兄も少なくないのでないだろうか。

「夏バテの主な原因は、暑気あたりによる自律神経の失調や水分不足、胃腸の働きの低下による栄養不足、睡眠不足などが挙げられます」(全国紙文化部記者)

むろん、夏バテ予防には水分と栄養の補給、十分な休養が必須だが、それ以上に重要なのが"食"だ。しっかり食べてスタミナをつけなければ、夏を乗り切るどころか、精力減退で、下半身まで夏バテの危機。若かりし頃に女の子を奪い合ったこの季節は、中年になった今も、勝負の季節。仕事で家庭で日夜、戦う男にとって、まさに天王山(!?)と言えるのだ。

そこで本誌記者は今回、夏バテを解消し、滋養強壮と精力増強を助ける究極の"オヤジグルメ"を徹底追跡。辿り着いたのは、日本一暑い"土佐"だった。

「昨年8月12日、高知県四万十市の西土佐地区で、国内観測史上最高となる41度を記録しました」(前同)

日本一暑い高知県のシンボルが、南国土佐で生まれ育ち、日本の曙に向かって幕末を疾走した坂本龍馬。持ち前の行動力と異端児のセンスで様々な知識を吸収し、江戸幕府を倒す原動力となった薩長同盟の立役者である龍馬が、行く先々で女性にモテ、男性をも惹きつけたのは有名な話。

そんな幕末を代表するモテ男が好んで食べた食こそが、究極のスタミナ料理であるのは、もはや必然だ。

「史料を当たると、龍馬の好物については諸説ありますが、有名なところでいえしゃもば、軍鶏とサバですね」こう語るのは、龍馬に関する著書もあり、先日、漫画『深夜食堂』の作者である安倍夜郎氏とともに、同県西南の幡多地方の食文化に関するコミックエッセイ『四万十食堂』(双葉社刊)を上梓した左古文男氏だ。

確かに龍馬の好物が軍鶏だったことは、作家・司馬遼太郎の名著である『竜馬がゆく』にも描かれている。

「近江屋で中岡慎太郎とともに暗殺された夜も、龍馬は風邪気味の体を温めようと、軍鶏鍋を所望したことが描写されていますが、さすがに真夏に鍋はきついですよね。そこで、やはり夏はカレーでしょう。軍鶏と高知産のコーチンの一種・土佐九斤を自然交配させた"土佐はちきん地鶏"という深みのある味わいの地鶏を具材に使ったカレーがあるんですが、これはオススメです」

はちきん地鶏は脂質が少なく、必須アミノ酸を大量に含み、精子に欠かせない亜鉛成分もたっぷり。精力増強も期待できそうだ。

レトルトカレーは通販などで、お取り寄せも可能。味はガツンと辛口、ニンニクとショウガの香りが食欲をそそり、暑い夏でもガッツリ食える、まさに男のグルメだという。

「龍馬はサバも大好きだったようで、脱藩するまでの青年期に、よく食べていたとも言われています。実際に高知では、サバを丸々一尾使った尾頭つきの姿寿司とカツオのタタキは、単品でも、また皿鉢(さはち)料理の主役としても愛されています。近年は、"清水さば"という刺身で食べるとウマい絶品のブランドサバもあります。こちらも一度は味わってほしいですね」

前出の『四万十食堂』によれば、清水さばは潮流の速い足摺岬沖の大陸棚域に生息する大型のゴマサバで、独特の漁法で一尾ずつ大切に釣り上げられ、生け簀(す)に入れて港まで持ち帰られる別格扱いの極上品。

"サバの刺身はあたりそう……"なんてイメージもあるが、徹底した鮮度管理がされた清水さばの刺身はプリプリ、コリコリとした食感で、そんな先入観も杞憂に過ぎないという。

もちろん、ただウマいだけでは、到底、戦う男の究極グルメとは言えない。当然、サバは絶倫食材でもあり、これらの青魚には、勃起力回復に効果的とされるDHAやEPA、数々のビタミン類が含まれていることで知られている。

四万十川のウナギを食べた!?


「龍馬は16歳のとき、父の八平に代わり、藩命で中村(現・四万十市中村)へ赴き、四万十川の堤防工事の監督をします。このとき、20歳年上だった樋口真吉と出会い、後に土佐勤皇党に入党した2人は、終生の同士関係を結んでいます。暗殺されるひと月前、身の危険を感じた龍馬は友人の望月清平に、"近江屋が危ないので、樋口真吉に頼んで、安全な隠れ家を探してくれ"という火急の手紙を出していますが、その願いが真吉に伝わる前に龍馬は斬殺され、軍鶏鍋を食い損ねました。史料が残っているわけではありませんが、樋口真吉は土木工事に従事していた龍馬に精力をつけさせようとして、四万十川の天然ウナギをご馳走したのではないでしょうか」

思えば、歌人・大伴家持(おおとものやかもち)が『万葉集』に記し、江戸時代に平賀源内が土用丑の日に食べる習慣を広めたウナギは、その昔から、精のつくものとして知られる。

猛暑もなんのその。坂本龍馬メシをモリモリ食べ、夏バテを吹き飛ばすぜよ!

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