詐欺被害に気づかず死んで…

身近な詐欺のひとつに架空請求もある。ありがちなのが、アダルトサイト閲覧による不当請求だ。この場合、"家族や会社に知られたくない""恥ずかしいから誰にも相談できない"という弱みを突いたもので、「なかにはヤバイと思って、慌てて数万円も支払ってしまう人がいる。でも、これは絶対にしてはいけないことなんです」
と、『詐欺の帝王』(文春新書)などの著書があるノンフィクション作家の溝口敦氏が言う。
「一度、金を払うと、彼らのリストに名前が載ってしまい、同じ詐欺集団が別会社を名乗って、また金を奪おうとして接触してくることになる。彼らは"一度、詐欺に引っかかった人間は何度でも引っかかる""根こそぎ奪ってやる"と、本気で思ってますからね。そういう場合は、堂々と"来るなら来い。アダルトサイトぐらい誰でも見る"と言い返さないとダメです。彼らが来ることは絶対にない。もし来たら、一緒に交番に行けばいいんです」(前同)

実は、この"根こそぎ奪い取る"のが、「最近の主流」と言い放つのが、詐欺師グループ幹部の中知氏(仮名)だ。そのため、組織的に動くことが多いという。
「組織的詐欺」をわかりやすい例でいえば、以下がそうだ。Aが紹介した商品を、Bが"私が買い取りたいので、ぜひ購入を"と依頼してきたので大金をはたいて購入したところ、実はAとBはグル。その後、Bと連絡が取れなくなってしまったというパターン。
そして最近は、さらに巧妙なやり口も存在する。
「たとえば、ある"獲物"に"富士山噴火にも耐えられる防護マスク"を売りつけようとしたとする。そしたら、獲物の出勤時や食事時などに、その周りにサクラを配置し、"御嶽山被害者の9割が即死だった""防護マスクがあれば助かったらしい""富士山噴火の噴石や噴煙は東京にも来るんだって"などと会話をさせるんだ」(前同)

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この結果、刷り込み効果で獲物はマスクに対して警戒心が薄らぎ、むしろ、マスク購入の機会をラッキーとすら思い込むのだという。
「テレビや新聞、雑誌にも"御嶽山検証""富士山が噴火か?"なんてニュースはたくさん組まれてるでしょ。それが、獲物に余計に真実味を与えているんだ。そのマスク、その辺で1万円で買ってきたものなんだけど、20万とか30万とかで獲物に売る。獲物が騙されたと知るのは、噴火に直面したとき。つまり、彼は自分が詐欺に遭ったと気づかずに死んでいくんだ」(同)

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