ネット上だけの彼氏が10人

――そうだったんですか。メジャーデビュー前は過激なパフォーマンスなどもされていたので、その思いは意外です。

大森 いろいろなルールでがんじがらめになっている世の中なので、私を見て"ここまでやっていいんだ"って思って、勇気を出してくれる人を増やしたいんです。そうしたら、もっと、世の中に面白い人が増えていく気がしているんですよね。そのためには、目立つところでやらなきゃ意味ないと思っているんです。

――多くの人に理解してもらうために、メジャーデビュー前と変えたりする部分がありますか?

大森 音楽的には、BGMにもなりうるような聴きやすいものにするという意識はしましたね。本当は、コンポの前で正座して聴いてもらえれば、すごくうれしいですけど、そういうわけにはいかないじゃないですか(笑)。きっと、ドライブ中や料理中など、いろんな状況で聴いてくれるはずなので、聴きやすさのバランスは考えましたね。

――ちなみに、楽曲の中には恋愛を書いた詞もありますが、大森さんはどんな恋愛をしてきたんですか?

大森 中高生時代は、ネット上だけの彼氏が10人くらいいましたね(笑)。

――えっ、具体的には?

大森 はい、ネットで知り合って、メールだけでつきあうことになって、実際は会ったことはない彼氏がたくさんいたんです。学校のような規則があって体裁を保たなければいけない実世界とは違うので、みんな感情をぶつけてきてくれて、それが楽しかったんですよ。

――たとえば、どんなやりとりが?

大森 漫画家になるために東京に出てきたっていう男の人がいたんですよ。その人に「いつ売れんの?」ってメールで挑発すると、その人が「俺はこういうことをしたいんだよ!」みたいな感じで、たまっているものをぶつけてきてくれて、そんな瞬間に興奮しましたね。そういう、喜怒哀楽の激しい人がめちゃくちゃ好きなんですよね。

――その興奮は、性的なものとは違うんですか?

大森 性的なものとはちょっと違う興奮ですね。でも、性的なものもありましたよ。「今はノーパンでチャック開けて、レンタルビデオ屋さんに来ています」っていうメールが来たこともあって。そういうやりとりも楽しんでいました。大人をもてあそぶ、嫌な感じの10代の女子だったとは思いますね。でも、その漫画家志望の人は、結果的に本当に売れっ子の漫画家になったので、それはよかったのかもしれません(笑)。


エピソード自体は刺激的だが、しっかりとした自分独自の考え方を持っている大森さん。強いメッセージをポップな音にのせて届ける、新時代の歌姫にこれからも期待しています。
 

大森靖子 おおもり・せいこ
1987年9月18日生まれ。 愛媛県松山市出身。武蔵野美術大学進学を機に上京。インディーズで絶大な人気を誇り、昨年12月3日にアルバム『洗脳』でメジャーデビュー。自身の楽曲のプロモーションビデオをもとに映画化した『ワンダフルワールドエンド』が新宿武蔵野館ほかで公開中。

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