津波に飲み込まれる危険区間

日本の高速道路を運営・管理する『NEXCO』によると、現在、供用されている全国の9000キロの高速道路のうち、約4割にあたる3700キロが供用から30年以上経過。この区間では経年劣化のリスクが高まっているという。
「日本で初めて開通した名神高速(1963年~65年7月)は、その全線が供用から今年で50年が経過。しかも、日本の大動脈として交通量が多い区間でもありますから、道路自体の負担が尋常ではない。巨大地震が発生した場合には、大きな被害が想定されます」(大手建設会社社員)

さらに、東名高速の全線のほか、東北道、中央道、中国道、九州道においても、かなりの区間で供用から40年以上が経過している。
また、通常の道路以上に注意が必要とされるのがトンネルや橋だ。

2012年12月に発生した中央道・笹子トンネル(山梨県大月市)の天井板落下事故では、史上最悪となる9人が死亡。130メートルの天井が崩落するだけで、この惨劇なのだ。
「この事故の発生原因として、トンネルの老朽化が第一に挙げられますが、同時に、いずれも11年に発生した東日本大震災や長野県北部地震(M6・7)の影響も指摘されています。地震の揺れや、それに伴う地殻活動がトンネルの歪みやズレを招いているということです。揺れているその時だけでなく、間を置いて事故を引き起こすこともありえますから、ただ走行するのではなく、異音や、わずかな変化を探ることも重要になります」(前同)

NEXCOの発表によると、30年以上経過している橋梁は全体の4割、トンネルでは約2割を占めているというから、命を守るうえで決して無視できない。

また、高速道路の危険を探るうえで忘れてはいけないのが、首都高だ。東京の中心部を走り、首都交通を円滑にしてくれる大きな存在だが、ビルやマンション、住宅、一般道が隣接するこの道路で万が一の事態があれば、尋常ではない被害が予想されるのだ。
「国の有識者会議では、30年以内に70%の確率でM7級の首都直下地震が予想されています。しかしながら、首都高は老朽化が進み、開通から50年以上の区間が40キロ以上もあり、30年以上の区間が全体の半分に当たる140キロにも上るんです」(全国紙都政担当記者)

老朽化だけでなく、連日連夜、膨大な量の車両が通行するため、物理的損傷も大きい。そのため、首都高の運営会社は、特に危険度の高い5区間・約8キロを建て直すというが、それだけでも約3800億円かかるというのだ。
「首都高は、現設計より損傷を2倍受けやすいとされる昭和48年以前の建設方式で作られた区間が多く、本来は、建て直すべき区間はもっとあるんですが、予算の問題もあり、簡単には進まないでしょう」(前同)

建て替えが必要な区間は問答無用で警戒が必要だが、
「昭和48年以前の設計」と「損傷の激しい区間」が被っている場所が、首都高全体の25%にも上るというのだから、恐ろしい。

さらに、老朽化だけではない問題もある。それは地盤の問題だ。
もともと地盤が弱い地域や埋め立て地においては、たとえ建造物が免震・耐震構造であっても、激甚なる揺れと被害が想定される。
「23区内で地盤が弱いとされるのが、東京駅付近や浜松町周辺地域。この周辺を走る都心環状線や1号羽田線、八重洲線は、わずかな揺れでも大きく感じるところがあるので、注意が必要です」(同)

また、巨大地震で発生しうる津波に襲われかねない高速道路もある。前出の村松氏が話す。
「郊外の山際にあると思われがちの高速道路ですが、直接海に面している区間もあります。こうした箇所では、津波が発生した際、飲み込まれてしまう可能性があります」

これに該当するのが東名高速・由比PAや北陸道・美川ICの近辺、また、厳密には高速道路ではないものの、千葉・九十九里有料道路や宮崎・一ツ葉有料道路も海に面している。
「特に東名・由比PA付近は、交通量が多いだけでなく、PA駐車場で睡眠休憩を取る人も多数います。しかも、ここは気象庁が東海地震発生時に2~3メートル、もしくは3~5メートルの津波の発生の恐れを警告している地域ですから、揺れを感じた際は、その後の報道などに耳を傾けてください」(同)

いつ起こるかわからない巨大災害。自分や家族、同乗者の命を守るために、最大限の準備をしておきたい。

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