先日「WWE」を特集するムック本の取材を受けた。私がしゃべったのは「WWF時代からの変遷を日本の観客目線で語る」という内容。

たとえば「ボブ・バックランド」を論じるだけで興味深い。WWFは全米進出に備え、エースをボブ・バックランドからハルク・ホーガンに変えた。「バックランド以前・以後」で激変した。プロレスとは何か、エンタメとは何か、もっといえば大衆とは何か。そのポイントでも考えられる。

そんな話をしながらも、インタビューの途中にしばしば出てきたのが「猪木史観」。私がここ半年くらい使用している言葉である。具体的にいうと「1964年のジャイアント馬場」(柳澤健・双葉社)を読んでしみじみ考えなおした「猪木の頑張り」のことだ。

あの本を読めば、世界で即通用したジャイアント馬場の偉大さがわかる。それまでも馬場が新人時代にアメリカで成功していたという事実はプロレスファンなら誰でも知っていた。しかし具体的にどの程度かは知らなかった。そこを柳澤健は丁寧に掘り起こしたのだ。
  1. 1
  2. 2