AIIBとは何なのか? なぜ世界中の国々がこぞって参加したのか?

それを理解するには現在の国際金融の実態を知る必要がある。

わかりやすいたとえ話をしよう。

リーマンショック後の世界は、ちょうど、日本のバブルが崩壊して住専問題が起きた90年代半ばをイメージすればいい。当時、バブルに踊った大手都市銀行などは莫大な不良債権を抱えて破綻しかけていた。問題を先送りにしようと「飛ばし」などの粉飾決算を繰り返してきたが、ついにごまかしきれずに「住専」と呼ばれたノンバンクに公的資金の導入が決まった。

あのとき、日本中がずさんな経営で不良債権を生んだ大蔵省(当時)や都市銀行の経営陣たちを批判した。その結果、高級官僚や経営陣の一部から逮捕者までも出た。大蔵省は改組されて財務省となり、新たに金融監督庁ができるなど、日本の金融政策は大きく変わった。

現在の国際金融の世界もまったく同じで、大蔵省のポジションが「IMF」や「世界銀行」「FRB」、不良債権を抱えて破綻しかけた都市銀行が欧米諸国にあたる。さしずめ国家破綻が間近に迫っているギリシャは、桃源社や末野興産といった「バブルの紳士」と思えばいい。

日本のバブル崩壊は、当初の発表で数兆円規模といいながら、最終的に200兆円という膨大な不良債権を生み出した。その処理のために使われた公的資金は70兆円にも及ぶ。

それでも日本の場合、国営の金融機関だった当時の郵便貯金や民間銀行の定期預金など安全な金融資産が400兆円あった。不良債権の倍以上の資産を保有していたから政府は公的資金を工面してソフトランディングできたのだ。

この400兆円の金融資産が、すべて土地や株といった財テクや投機に回されたまま、バブルが崩壊したとすれば、どれほどの「大混乱」になるのか、想像すらできない。

その「大混乱」こそが、現在の国際金融の世界に起こっている「バブル崩壊」なのだ。不良債権を引当する資産がまったくない状態で、なんとか問題を先送りにしてごまかそうと必死になっているとイメージすればいい。

ともあれ、国際金融システムがいつクラッシュしても不思議ではない危機的な状況なのだ。

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