●利回り15%の隠れた税優遇『個人型確定拠出年金』

「隠れた税優遇」といわれるのが、個人型確定拠出年金だ。個人型確定拠出年金は、個人が自ら金融機関に口座を開設し、掛け金を積み立てて運用先を選び、運用結果次第で年金額が決まるという年金制度。「現在は企業年金のない会社員や自営業者しか加入できないが、5月24日の改正法成立で来年から公務員や主婦などに広がり、原則的にすべての現役世代が対象に」(全国紙経済部記者)

 節税効果が非常に大きく、「隠れた投資優遇税制」と呼ばれてきた制度だ。個人型確定拠出年金の「所得控除」は、「所得」から自分が積み立てた掛け金の全額を引くことができるもので、その節税効果は、たとえば最低税率15%(所得税5%、住民税10%)ならば、10万円を掛け金とした場合、掛け金全額が控除される。このため、10万円の15%、1万5000円が節税できる。つまり、利回りが15%の投資商品と同じ計算になり、お得なのだ。

 もし、自営業であれば積み立てられる金額の上限は年間81万6000円(サラリーマンが掛けられる上限は27万6000円)、戻ってくる税金の額は、なんと年間12万2400円(掛け金合計が81万6000円の場合)、30年間なら367万2000円なのだ。しかも、運用期間中の運用益も非課税で、原則60歳からの受け取り開始後も優遇税制が適用される。

「ただし、個人型確定拠出年金においては、金融機関の口座管理手数料が高く、運用先の投資信託の信託報酬も割高なものもあります。金融機関の違いによる総コスト差は、たとえば30年加入で数百万円になりかねません。現在、口座管理手数料が低いのはSBI証券やスルガ銀行です。個人型確定拠出年金で運用できる金融商品のコストが安いというのは、投資家の側からすれば大きなメリットですが、金融機関側から言えば、あまりうまみがなかったんです」(前出の藤原氏)

 では、選択の幅が限られてしまっているのかと思いきや、藤原氏が続ける。「これまでは、あまり宣伝されていませんでしたが、原則的にすべての現役世代が対象になるとあって、今後は注目が集まります。マイナス金利時代で運用先に迷うかもしれませんが、定期預金など元本確保型の運用先から始めたらどうでしょうか」

 来年を見据えて金融機関も個人型確定拠出年金の品揃えを強化すると思われる。節税の一つの手法として、じっくり検討したい。

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