おそらく「理想のシンプルなラーメン」がAFURIだったのではなかろうか。AFURIの澄み切ったスープの奥から沸き上がる力強さは、芳根京子という女優の演技と相通ずる。

 一見、淑やかで物静かだが、秘めたる情熱をじわじわと滲ませる。コメディに振っても巧みにこなすが、やはりシリアスな芝居が水際立っている。19年公開の映画『居眠り磐音』で非運のヒロイン役を熱演するのを観て、そんな印象を強くした。

 にしても気になるのが、ところどころ出てくる北海道談義。北海道は母の郷里で、自身にとっても縁が深いのだ。なんでも京子の父は広告クリエイターで、東京で制作会社も経営し、年商2億円を稼ぎ、ライブドアと共同事業も行っていたという。

 ところが、06年に同社の証券取引法違反事件の煽りを受け、経営難に陥り、北海道の農家出身の妻の伝手を頼って、道内で農作業に従ずるなど、職を転々としたのだとか。そんな苦労を重ねた父を芳根はこよなく尊敬しているという。

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