もっとも、その演技パートに秋元と西野自身は登場しない。しかし、それでもなおこのスナックでのシーンは、アイドルとして生きる2人の人生を俯瞰して見つめるような趣を持つ。

 それは、かつてひとときの時間をアイドルとして生きた者たちの記憶を、ノスタルジックに刻みつけるようなものでもある。そしてまた、街の片隅のスナックで起きた小さな寓話のようなラストは、2人の現在と過去とを溶け合わせるような後味を持っている。

 太陽コンピューターは以後も乃木坂46の音楽系個人PVを相次いで担当し、それらのうちには西野七瀬「待ってるガール」や、齋藤飛鳥「ミュージカル 齋藤飛鳥」のような人気作も生まれていく。

https://www.youtube.com/watch?v=vnkfiAK43oU
(※西野七瀬個人PV「待ってるガール」予告編)

■齋藤飛鳥「ミュージカル 齋藤飛鳥」

 特に、ひとつの作品中に3曲を組み込み、齋藤がバスから観覧車、浜辺へと移動してゆくにつれてムードを変えながら歌唱を披露する「ミュージカル 齋藤飛鳥」は、もともと付属特典だった個人PVに、ある展開を持った音楽作品としての豊かさを封入してみせる好例となった。

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