三遊亭円丈師匠、逝く!プロの芸人たちこそが認める落語界に残した「2つの偉大すぎる功績」の画像
三遊亭円丈師匠(さんゆうてい・えんじょう)

 柳家小三治師匠、桂文字助師匠、川柳川柳師匠に続き、また落語界に訃報が伝えられた。

 11月30日、三遊亭円丈師匠が心不全のため亡くなった。享年76。

 自らもファンだという、コラムニストの中井仲蔵氏がこう語る。

「ちょっと前から、”円丈師匠の落語はもう聞けないかも”という話を耳にしていたのですが、まさかこんな早く亡くなってしまうとは……。落語界では70代はまだまだ中堅。これから円熟味の加わった噺を聞けるかと思っていたのに、残念です」

 中井氏によると、「さまざまな円丈師匠の功績のうち、特に偉大なもの」は2つあるという。

 その一つが、1986年に出版された『御乱心 落語協会分裂と、円生とその弟子たち』(主婦の友社)だ。

 落語関連の本を何冊か手掛けたというある編集者が解説する。

「この本は、戦後落語界の最大の事件『落語協会分裂騒動』の一部始終を、すべて実名でぶちまけたノンフィクションです。円丈師匠は騒動の時は真打に昇進したばかりの駆け出し落語家でしたが、事件の中心人物だった三遊亭円生の弟子だったことから騒動に巻き込まれ、大変な苦労をなさいました。本の中では、兄弟子の三遊亭円楽師匠(先代)や立川談志師匠のことを、かなり激しい筆致で批判しています」

 一日早く入門したら「兄(あに)さん」と呼ばれる落語界。上下関係が厳しく、また何かとしがらみの多いその世界で、こんな本をすべて実名で書くというのは、よっぽど本人も風当たりが強かったろうが、おかげで騒動の全貌が後世に伝わることになった。

 ちなみにこの本は長らく絶版状態だったが、現在は『師匠、御乱心!』とタイトルを変えて小学館文庫から出ているので、興味のある人は一読してみてはどうだろうか。

  1. 1
  2. 2