ヤクルトをリーグ連覇へ導いた“村神様”こと村上宗隆(22)。日本人選手として初めて“世界の王”を超え、18年ぶりの三冠王という快挙。
「シーズン終盤は、本塁打記録の期待を一心に背負うことになった。極限の重圧の中で、自身の仕事もきっちり果たす。そんな22歳は古今東西、彼以外にはいません」(スポーツ紙デスク)
令和最強のスラッガーに名乗り出た村上。そこで本誌は、「誰が歴代で最もすごかったか?」にフォーカス。「最強スラッガー」論争をお届けする。(文中=一部敬称略)
■王貞治、落合博満“逃さず捉える”
「まず大前提として、投手の球は昔とは段違いに速くなっているし、変化球も多彩。高校野球なんかでも一目瞭然だけど、野球のレベルは今のほうが圧倒的に高いよね。昭和の野球人の中には、かたくなに認めない人もいるけど、これは厳然たる事実だと思うよ」
そう前置きしつつ、それでも最強の打者は「右の落合、左の王」だと断言したのは、愛甲猛氏だ。
ロッテ時代に薫陶を受けた“師匠”落合博満の教えは、今でも彼の野球論のベースにある。
「技術の高さはもちろんだけど、オチさんや王さんがすごいのは、狙って本塁打を打てること。俺にだって、そりゃたまにはあったけど、それを続けながら、率も残すなんてのは神業に近い。来た球にだけ反応しているうちは、“逃さず捉える”なんて絶対にできないね」
実際、落合の全盛期である1986年シーズンの出塁率4割8分7厘は、今なお燦然と輝くNPB記録。
3度の三冠王は唯一無二。首位打者、本塁打王、打点王の主要3部門を各5度以上制しているのも、王を除けば落合だけだ。
「オチさんの真骨頂でもあったハンドリングの技術や、相手投手のクセを見抜く観察眼が今後、もっと磨かれていけば、村上はもっと成長する。今はまだ、全盛期のオチさんほど“投げる所がない”状態ではないように見えるしね」(前同)
ちなみに、村上はバット職人に対して入団当初から事細かな要望をしていたことでも知られるが、同様に落合も、バットに“尋常じゃない”こだわりを見せた。
「実際、バットって同じものを10本注文したとしても、握った感触は全部微妙に違う。あの人は手袋をしないから、よけいに敏感だった。しかも、打席に向かう前もスプレーはなし。ロジンだけなんだから、どんな握力してんだって話だよ」(同)