■いろいろなことに携わるからこそ、多くのことをインプットできる
そうした中、ここまで生きてこられたのは、僕ならではの笑いやユーモアを面白がってくれる人がいてくれたからなんですよね。
たとえば、長年の経験上、どこの制作の部署でも、部員が10人いたとして、「藤井さんの企画、いいね」と言ってくれるのはせいぜい2人。そうした人たちをたどって仕事をしていくことが、私の一芸を究めない仕事術といえるかもしれません。
だから、僕は自分のことを「ひとり隙間産業」とか「ミスター・ニッチ」と呼んでいます(笑)。
僕にとって、一芸を究めないことによるメリットもあるんです。それは、いろいろなことに携わるからこそ、多くのことをインプットできるということです。
現在、『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で構成を担当していますが、40代前半のオードリーの2人が話す情報って、60代後半の僕らの世代はあまり知らないわけです。それを、現場に一緒にいるというだけでインプットできる。
つまり、さまざまなジャンルの現場にいればいるほど、自分が知らない情報を教えてもらえるし、それを違う現場で生かすこともできるんです。これはすごく役に立っています。
今後に関して言うと、僕は放送作家の中でも、コンスタントに本を出しているほうなんですが、本の出版はあまり年齢が関係ないので、まだまだ書き続けていきたい。
現時点で、僕でなければ書けないアイデアが4つ。それを書き切るまでは、死ぬわけにはいかないと思っています。まあ、そのアイデアが何かはまだ言えないんですが(笑)。
こんなふうに、いくつになっても、何かを書き続けようという気持ちを持っていられるのは、すべて星さんのおかげなんですよね。
「とにかくたくさん書きなさい」新人だった頃、アドバイスとしていただいたこの言葉は、今もなお忘れることができません。僕の人生において、星さんという偉大な方に出会えたことは、本当に運がよかったとしか言いようがないですね。
藤井青銅(ふじい・せいどう)
1955年、山口県生まれ。1979年に第1回「星新一ショートショートコンテスト」で入賞。以降、放送作家、作家、脚本家、作詞家など、さまざまな分野で活動。特に放送業界では、書いたラジオドラマの脚本が数百本に及ぶ他、ラジオ・テレビ番組の台本や構成を数多く手掛けている。さらに、腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースなども担当。小説やエッセイ、企画物など、著書も多く、今年5月には『一芸を究めない』(春陽堂書店)を出版している。
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