小出恵介(撮影・弦巻勝)
小出恵介(撮影・弦巻勝)

 僕は以前からアメリカのエンターテイメントに強く憧れていて、アメリカの空気を実際に感じてみたかったんです。休業することになったこともあり、2018年10月から、3年近くアメリカのニューヨークに行きました。

 その中で感じたのはエネルギーの熱量。日本と違い、彼らと同じくらいの自己主張をしないとダメなんです。日本人からみたら“図々しい”と思われるくらいが普通なんですね。

 日本人って、どこかみんな譲り合って、お互いの距離感をはかって、お互いにとって居心地のいい距離を作るじゃないですか。でも、向こうはそうじゃない。対面で会話するにしても、前屈みで30センチくらいの距離で、しかも相手の目をしっかりと見る。それが向こうでは“心を開く”ということなんです。

 それで感じたことは、日本人は、自分を前に出すのが得意じゃないってことです。日本人は、まずやる前に、言う前に考える。だから「用意ドン!」でいろんな人と一斉にワーってなっていく中で出遅れるんです。結果、損しやすいというか。でも、それって慎重で、丁寧で、気を遣うということで日本人として誇りに思ってもいい部分だと思うんです。

 アメリカでの生活を続けていく中で、俳優を続けていくべきか、迷っていた時期もありました。でもそのときに、多くの人に「続けるべきだ」と言っていただいたんです。もちろん休業で迷惑をかけてしまった分、「俳優業を続けて、償っていくべき」という思いもあったんだろうと思います。でも、そうした周りの方のアドバイスもあって、もう一度前向きに、俳優業に邁進することができるようになったんです。

 その後、世界中がコロナ禍となって、帰国したんですが、縁あって俳優の仕事を再開させてもらいました。最初の仕事は映画『女たち』。ワンシーンでセリフも4行ぐらいでしたが無茶苦茶、緊張しましたね。

 その後『酒癖50』というドラマで本格的な現場復帰となりました。約4年ぶりに絡みのお芝居をさせてもらいましたが、変なぎこちなさはなかったです。20年近く俳優をやってきて体に染みついていた勘がよみがえったというか。自分でもしっくりきた感じはありました。

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