■なぜここまでの人気作になった?

 視聴者のツイッター上の反響は、「手話での会話シーン、周りの話し声とか生活音とかも全部ない、本当に静かなシーンに字幕だけの演出だからこそ、よりリアルに感じる事ができるし、当事者に感情移入してしまうし、苦しいぐらい引き込まれる」など、手話による会話シーンに称賛の声が相次いでいた。

 今回の平均世帯視聴率も8.3%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と好調だが、驚異的なのが見逃し配信「TVer」のお気に入り登録者数だ。246万人(12月20日現在)と、2位の『PICU』(フジテレビ系)の2倍以上の数字を叩き出しており、再生回数も同局の歴代最高記録を更新。1人でじっくり見る視聴者が多い配信で好調なことから、熱心なファンが多いことが分かるが、なぜここまで支持されているのだろうか?

「手話シーンの影響が大きいんだと思います。会話のスピードが一般的なドラマよりもゆっくりなうえ、テロップが流れるため、視聴者が画面に集中する、というかせざるをえない。“ながら視聴”がしづらい演出のため、結果的にキャラや物語に感情移入するようになり、作品への思い入れが強くなる結果につながったのでしょう」(テレビ関係者)

 もちろん、生方氏の脚本、俳優陣の演技の力も大きい。しかし、視聴者から「引き込まれる」という反響があるように、手話会話よる効果が後押ししたというのは、可能性として十分にある。

 最近は山場をいくつも用意するなど、派手な展開を見せるドラマが支持される傾向にある。たとえば今期放送のドラマでは、主人公たちが何度も大きなピンチにぶつかる、日曜劇場『アトムの童』(TBS系)がいい例だろう。誰かが死ぬわけでもなく強大な敵を倒すこともない、きわめて静かな『silent』がここまでのヒットになったのは、手話という手法も含め、画期的なことといえるだろう。

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