■中国で上映されるまで3年もの歳月がかかりました

 実は、中国って、ホラー映画がすごく少なくて、撮るのが難しいんですよ。というのも、中国共産党は幽霊とか非現実的なものを認めない、怪事件が起きても最終的には警察が解決しなきゃいけない、そんな決まりがあるんです。だから最初はこのオファーも半信半疑だったんですが、話を聞くうちに、そんな環境でも、“Jホラーの父”としての僕の才能を買ってくれた、中国映画人の心意気を感じて、それに応えたいと思って引き受けたんです。

 ただ、撮影に入っても、言葉の壁もあるし、ホラー作品の知識の差はどうしようもなくて、難航する部分もありました。脚本段階や編集段階でも、何度も審査が入りましたからね。結局、完成して中国で上映されるまで3年もの歳月がかかりました。

 その一方で、驚くことも多かったんです。一番驚いたのが、中国映画のお金のかけ方。中国映画の標準的な製作費って10億円で、日本だったら大作の域に入っちゃうくらいの規模なんですよ。病院1棟を屋内に作ってしまうくらいの巨大スタジオや、最新機材が十分にそろっているし、びっくりしましたね。それと、日本以外で映画を作って驚いたのが、韓国、インド、タイなどのアジアの映画人が中国に来ていたこと。最初から国を越えて世界を視野に入れて映画を作ってるんです。

 今回の経験を受けて、日本の映画界は、自国のマーケットを重視しすぎだと感じましたね。これからは日本もそういったこだわりは捨てて、垣根を越えて多くの国と交流し、資金や人材をサポートしあうことが重要なんじゃないかと、一映画人として思っています。それができれば、それこそEUみたいな感じで、アジア映画という大きな集合体は、ハリウッドに対抗できると思います。もちろん自分も、そういう仕組みに加わることができれば、うれしいですね。

 そのためにも、今自分にできる、ホラーに向き合い、ホラーを提供することは続けていきたいです。

 僕自身の今後の目標は、国境だけでなく映画という垣根を越えて、小説、舞台、テレビ……など、これからも、いろんなメディアで、良質なホラーを作って展開させていきたい、これに尽きますね。

鶴田法男(つるた・のりお)
1960年12月30日、東京都生まれ。大学卒業後にビデオメーカーの買つけ・宣伝、映画配給会社の宣伝を経て、1991年にオリジナルビデオ映画『ほんとにあった怖い話』で監督デビュー。以降、発表した作品の演出が、のちに『回路』(01年・黒沢清監督)などに影響を与えたことから“Jホラーの父”と呼ばれる。近年では監督業以外でジュブナイル小説『恐怖コレクター』シリーズで小説家としても活躍中。DVD『ほんとにあった怖い話・新装版』がマクザムより発売中。

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