大谷翔平、長嶋茂雄、王貞治、清原和博…記録と記憶に残る真夏の大花火!伝説のホームラン衝撃の舞台裏の画像
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 気迫の剛速球を打ち返す一打入魂のバッティング――。ファンの脳裏に刻まれた名場面の裏側を徹底取材!

 この夏、全国各地で再開した夏の風物詩、花火大会よろしく、人々を魅了して止まないのが、プロ野球におけるホームラン。今回は、昭和・平成・令和の各時代を彩った“大花火”の舞台裏に迫る。

■ミスター巨人が天覧試合で

 トップバッターは、プロ野球を一躍、国民的スポーツに押し上げた“ミスター”長嶋茂雄(87)の一発だ。

 それは、1959年6月25日の後楽園球場。史上初の天覧試合となった対阪神戦で飛び出した。

「4対4の同点で迎えた9回裏。先頭打者だったミスターは、前の回からリリーフしてきた“宿敵”村山実のストレートを、カウント2-2から一閃。左翼ポール際に叩き込みました。しかも、この試合、両陛下の観戦は21時15分までと事前に決まっており、ミスターの一発による試合終了は、その3分前でした」(スポーツジャーナリスト)

 同年、初の首位打者に輝いたミスター自身も、「最も印象的だった試合」として、この試合を挙げている。

 一方、ホームランと言えば“世界の王”王貞治(83)を抜きにしては語れない。

 その王自身が、“生涯最高の一発”を問われて挙げるのが、阪急との対戦となった、71年10月15日の日本シリーズ第3戦での一打だ。それは9回裏にサブマリン山田久志からV7を手繰り寄せた逆転3ランだという。

「四球の柴田勲に続いて、ミスターも安打で出塁したことで、山田はセットポジション。“それで、タイミングを合わせやすかった。決して失投ではなく、打てるとは思っていなかった”とのことです。第2戦でも山田から一発を放っていたとはいえ、直前までは3三振を含む5タコ。そこから仕留めるのは、さすがですね」(前同)

 ただ、投手目線から見れば、王との勝負は避ける選択肢もあった場面。

 このときの投手心理を、公式戦67打席の直接対決で、被安打9&被本塁打3と、“王キラー”でもあった江本孟紀氏が推し量る。

「王さんという打者は自分のゾーン以外の球に、まず手を出さない。しかも投げるほうには、“三振に斬りたい”との誘惑もある。実は、それが間違いのもと。投手が気負えば気負うほど、まるで引き寄せられるかのようにボールは内へと入っていく。同年代の星野(仙一)さんや平松(政次)なんかも、みんな、それでやられたんだよ」

 それをまざまざと感じたのが、いきなり満塁弾を浴びた78年の開幕戦。2ストライクと追い込んだ直後に投じた、三振狙いの一球は、「悪魔の囁きだった」と、江本氏は回想する。

「内角低め、膝元にズバッと決めて見逃し三振というのが、投手からすれば一番の快感。対王さんに関しては、あの一発以降、我欲は一切、持たなかった。仮に満塁でも敬遠でいい。魔物に魅入られないために、常に、それぐらいの気持ちでいる必要があったんだ」

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