最近、世界を駆け巡った「中国にスフィンクスができた」というニュースを覚えている読者も多いだろう。よりによって、実物と同じ大きさのニセモノを娯楽投資会社が河北省に作ってしまったのだが、スフィンクスぐらいで驚くのは早い。中国では最近、アメリカのホワイトハウスやフランスのベルサイユ宮殿など、世界の名建築のニセモノがどんどん建てられているのだ。

しかも、その一部は官公庁の庁舎だというのだから恐れ入る。今年4月には、江蘇省のある市の環境保護局の建物がアメリカ連邦議会そっくりだと話題になった。メンツを重んじ、見栄を張りたがるのが中国人の特徴だが、経済成長の成果がこんなところで浪費されているのだとしたら、さぞかし中国人は怒っているだろう……と、日本人は思うかもしれない。

残念ながらわが中国はそうではない。役人が威張って当たり前、給料は民間より当然高く(もちろん賄賂もある)、庁舎は近くのどの建物より立派であるべき――こんな考え方がまだはびこっているのだ。

これに対して、日本の役所の建物は古い物が多い。私が住んでいる杉並区役所も、息子が通っている大学がある世田谷区の庁舎もかなり長い間使い込まれた建築物だ。聞けば、日本人は「役所が庁舎を直すのは、民間より後であるべき」という考え方があるのだという。実際、日本の公務員の給料は民間企業の動きに合わせて決まる。中国とは大違いだ。


この写真を見てほしいが、これはわが故郷・湖南省長沙市の公安局(日本の警察にあたる)の交通部のビルだ。地方都市の警察の一部門のビルが数十階建てというのはいくらなんでもやり過ぎだ。最近、中国のネットでは公安局と裁判所、検察庁のビルが立派すぎることに批判が集まり、社会問題化しつつある。

数年前、日ごろ役所の無駄遣いを批判する日本共産党が、東京の本部ビルを新しく立派に建て直したことが話題になった。中国でも日本でも、「民衆のため」をうたう共産党が立派なビルで見栄を張りたがる……なんとも皮肉なことだ。

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