中国のタブロイド紙「環球時報」といえば、常に日本を敵国扱いして悪口を書きまくる人民日報系のメディアとして日本でもよく知られている。その環球時報が先日、びっくりするようなタイトルの記事を載せた。

そのタイトルは、
「日本を訪れる中国人観光客が88%も増えたのは悪いニュースではない」
日本政府の調べによれば、今年上半期に日本を訪れた外国人観光客は去年より26・4%も増えた。そして、その中でも突出していたのが中国人観光客で、何と88・2%も増加していたというのだ。

今年は、日清戦争から120年目の年にあたる。去年の年末には安倍首相の靖国参拝もあった。尖閣問題も停滞状態に陥ったままだ。両国政府の緊張状態は解消されたとはいえないのになぜ、中国人は大挙して日本に押し掛けるのか。

一つは、環球時報の記事が指摘するように、政府の動向と民間の交流は必ずしも一致しない、ということ。中国人は食品の安全や治安など、日本と日本人のいいところを日本人が思っているよりずっと客観的に評価している。

もう一つは、何と言っても日本のすばらしい環境だ。中国人観光客に日本に行くことを
「肺を洗いに行く」
と表現する。ご存知の通り、中国の空気はPM2・5で今も汚れきっている。

実は以前から、中国の芸能人や有名ジャーナリストたちが「肺を洗う」ためにこっそり日本に訪れる傾向は続いていた。こっそり来るのは、バレると「売国奴」呼ばわりされるから。だが、観光客自体がここまで増えれば、これからは彼らも堂々と日本に来られるだろう。

心配もある。中国を訪れる日本人観光客の数は、今も減り続けているのだ。この「逆転現象」をとらえて、環球時報は、
「日中関係正常化では、中国社会が日本の一歩先を進んでいる」
と、余裕しゃくしゃくで書いている。

確かに、そうかもしれない。ただ、中国の環境汚染への懸念も日本人が中国に行かない理由のはずだ。そして、環球時報はなぜかそのことに触れていない。


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