磨りガラスの向こうに 白いワンピースが!

じっと見ていたら、彼女が後ろから声を掛けてきて、我に返りました。なんでもない、と部屋に戻ったんです。さすがにこんなことを話したところで馬鹿にされそうでしたから。でも気持ち悪かったので、窓はぴったり閉じました。

それから映画の続きを再生しようと、元の場所に座り、リモコンに手を伸ばしたときです。

ふっと右側が気になりましたので、顔を上げて、そちらを向いたんです。

声を上げそうになりました。

ベランダ側の窓、磨りガラス越しに白いワンピースらしきものが浮かび上がってるんです。そんなものは干していません。

さっき、カーテンを閉めていなかったことを思い出し、しまったと思いましたが後の祭りです。どうしてよいか判断できず、おろおろしていると、ワンピースはすーっと窓から離れて小さくなっていきます。

彼女が震えた声で呟きました。

「今の、女の………人?」

僕に見えなかった「頭」らしきものを彼女は目撃していました。それはセミロングくらいの茶髪だったようです。
ただガラス越しだったので、どんな顔だったのかまではわかりません。

向かいのマンションにあったはずのワンピースは、いつの間にかなくなっていました。

『本当に体験した! 恐怖の心霊報告書』¥700(税抜)双葉社

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