勝手に人の車に乗り込むナニか!
なだめていると、後ろからナニか聞こえました。布地を擦るような音です。
振り返ると、ぬいぐるみのひとつが、彼女が座るシートの方へ倒れていくところでした。
まだ走っていません。急ブレーキも掛けていませんし、なにもしていません。
その日、出掛けることは取りやめになりました。
そして、それから間もなく友達は車を売りました。
「後ろのシートよりもっと後ろ、トランク部分にも誰かが乗っている姿を見たから」
もう耐えられなかったのだと彼女は訴えました。
実は彼女、神社で車そのものをお祓いしてもらっていました。それでもなにも変わらず、ナニかが乗ってくる。それに原因もわからず、どうしてよいのかすら思い浮かばなかったのです。
だから、手放したということでした。
売却後、すぐに彼女の車は他の人が買ったようです。特別限定の珍しい車種で、人気だったとか。
多分、今もどこかを走っているのではないでしょうか。
『本当に体験した! 恐怖の心霊報告書』¥700(税抜)双葉社