目の前で消えてしまった奇妙なスーツ姿の男!
それから間もなくそこは売り家になりました。
もしかしたら、亡くなったのはその家の大黒柱だったのでしょうか。
だとすれば当然ローンを支払っていくのが難しくなったのでしょう。売るしかないはずです。
彼にこのことを話してみると、なにか訝しけげな表情を浮かべました。
「父親の保険金で払えなかったのかな」
そう言いますが、それはその家庭の事情がありますからね。なんともいえません。
ただ、その家はなかなか買い手が付きませんでした。
空き家になって1年が過ぎようとした頃、彼がそこでおかしな物を見ました。
スーツを着た男性らしき人が玄関先に立っていたので「ああ、不動産屋か買いたい人が様子を見に来たのだろう」と思ったらしいんです。
でも、そのスーツの人は彼の目の前ですーっと消えてしまった……と。
スーツの男を目撃して以来、彼は幻聴や幻視に悩まされるようになりました。どれも私にはまったく感じないものばかり。
しかし、とてもイヤでした。あんな話を聞かされていますし、そもそも棟上げの日のこともありますから。
後に私は彼と別れ、引っ越したので、後がどうなったのか知りません。
薄情かもしれませんが、聞きたくないんです。
『本当に体験した! 恐怖の心霊報告書』¥700(税抜)双葉社