煉瓦造りの「隧道」で鮮明に見える老人が!
今から1年前のこと。当時、渓流釣りにハマッていたオレは愛車を駆って渓流に向かっていた。ついでに心霊スポットを見てやろうということで、深夜1時過ぎに自宅を出発。最寄りの高速インターを下りたのは3時くらいだったと記憶している。
気持ち程度の街灯がともる山道を走っていると、少し先にトンネルが見えてきた。今時の近代的なトンネルではない。それは造りからもわかるし、なによりトンネル横の看板に「隧道」とあったので間違いないだろう。漢字表記のトンネルなんて、そうそうお目にかかれるものではない。
このトンネルも先ほどの山道同様、気持ち程度の照明しか設置されていない。初めて通るうえ、道幅が狭かったので、徐行運転並みのスピードで走っていた。
ゆっくり先に進んでいると、
ライトの灯りの中になにかが浮かび上がった。ん、なんだ? 注意しながら進んで行くと、作業着姿の老人がうつむいて座り込んでいた。とても鮮明だ。霊的なモノとは考えられない。
「どうしました?」
気になって声をかけてみたがなんの返答もない。2度、3度と繰り返したが、それでも返答がないので再び車を走らせた。
冷たいと思われるかもしれないが、オレはこのとき「この老人は、ここに住み着いている人なんだな」と思ったのだ。
だからあえてしつこくしなかったのである。