「錦織圭選手が羨ましいです」
――この2年の間にレジェンドという言葉が流行り、武さんもその一人に挙げられています。
武豊 野球の山本昌さんとか、スキージャンプの葛西選手とか、サッカーのカズさん(三浦知良選手)とかの活躍を見ると、頑張らなきゃとは思いますが……僕はまだまだでしょう。
――でも、気がつくと、周りは後輩ばかりです。
武豊 確かにそうなんですけどね。でも、競争もしていないし、対抗意識もまったくない。僕は自分のやるべきことをやるだけ。勢いのある若手に出てきてほしいとも思わないし、出てきたら嫌だなというのもないし。ひと言で言うと、興味ないですね。ただ、自分自身が頑張るだけですから。
――競馬以外のスポーツへの対抗意識もない?
武豊 錦織圭選手が全米オープンの決勝に進んだのを見て、羨ましいなとは思いましたけどね。
――羨ましい……ですか?
武豊 皆さん、プレッシャーに負けたとか、勝ったとかと言いますが、錦織選手は、そこに立てたってことですからね。同じ競技者として、やっぱり羨ましい。
――なるほど。そういう見方をされるんですね。
武豊 それに、いろんな競技があって、どの競技も面白いとは思いますけど……。
――けど?
武豊 やっぱり、競馬が一番、面白いと思っているんで(笑)。そう思いませんか? 馬同士の力勝負、騎手と騎手の駆け引き、人馬一体となったときの迫力と華麗さ。天気、馬場状態、ペース、展開と……ひとつとして同じことはないし、すべてを読みきって、その一瞬にすべてかける。これ以上に面白いものはないと思いますよ。母から仔へ、父から仔へと受け継がれる血の魅力もあるし、やっぱり競馬が一番です。
――昨日より今日、今日より明日、少しでもうまくなっていたいと、以前からおっしゃっていますが、その気持ちは変わりませんか。
武豊 それは騎手を辞めるまで変わらないと思います。それだけ、競馬は難しいですからね。
――乗れば乗るほど、難しく感じる?
武豊 いや。最初からずっと、そう思っています。思い続けて何十年ですね(笑)。
――それでも、競馬ファンは武さんが勝つことを待っています。
武豊 秋はGⅠも勝ちたいし、ひとつでも多く勝ち星を増やしたい。来年はキズナも戻ってくるし、ジョッキー武豊が本格化するのは、これからですからね。
――秋競馬での活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
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