連続して列島を直撃した大型台風が去って、いよいよ日本に「あの季節」がやって来た――ほかでもない、温泉だ。中国出身の私にいわせれば、日本の秋は食欲の秋でも性欲の秋でもなく、「温泉の秋」である(笑)。

澄み切った青空の下、真っ赤な紅葉を見ながら身体の芯まで野外の温泉で暖まる……。こういった温泉文化は、これまで中国にはほとんどなかった。だから、日本にやって来た中国人観光客は必ずといっていいほど、日本の温泉に入りたがる。中国人にとって日本の温泉は憧れの存在なのだ。

もちろん、中国にも温泉がないわけではない。中国で日本のような温泉文化が発達しなかったのは、国全体がまだ貧しかったことが最大の理由だろう。私が子供の頃、住んでいた湖南省長沙市には中心部の4つの区に2つしか銭湯がなかった。正直にいって、湯はいつもドロドロで、それも1カ月に1回入れればいいほうだった。

「ゆったりときれいなお湯につかる」
という風習が中国で育たなかったのは、中国人の風呂への淡白さも原因かもしれない。高温多湿な日本と違って、比較的乾燥した中国ではそれほど汗をかかない。
「さっさとシャワーで体を洗えばOK」
と考えている人が今でも多く、湯船がある家はまだ少ない。

最近の経済発展で、中国各地に大規模な温泉施設が「雨後のタケノコ」のように出来始めている。大半はまだ、歴史ある日本の温泉や、ありとあらゆるサービスを楽しめるスーパー銭湯を真似しただけのレベルだが、そのうち日本のレベルに追いつかないとも限らない。

素っ裸で男女が混浴する、という日本の究極の温泉文化に中国が追いつくまでには、まだ時間がかかるだろうが(笑)。


本日の新着記事を読む