北京で開かれた先日のAPECで、日本の安倍首相と対面したわが習近平国家主席が、何ともシブい表情を見せたのを覚えているだろうか。日中首脳会談をめぐっては、勝ったのは日本側だ、いや中国だと議論が分かれている。ただ、中国と日本をよく知る私は、今回の「勝負」は安倍首相に軍配を上げたい。

中国政府はこのAPECを成功させるため、冬を控えてPM2・5が漂い始めた北京に無理矢理つくり青空を出すことにした。その方法は、大気汚染の原因の1つとされる北京周辺の工場を操業停止させること。ただ、車両規制を含めた一連の強引なやり方は、必ずしも市民に歓迎されていない。約100km離れた天津でもスチーム暖房の開始が延期され、市民は寒さの中、震えて過ごさねばならなかった。

外交もうまくいっているとはいえない。3月に台湾で起きた学生による国会占拠運動に続いて、この秋には香港でも学生デモが起きた。どちらも表面的には地元政府が怒りの対象だが、その背後にいるのは強引なやり方を押し付ける中国政府。中国をよく知る台湾人、香港人から立て続けに「ノー」を突き付けられたのは、習政権にとって不気味な兆候といっていい。

APECには台湾の馬英九総統が参加せず、期待された歴史的な中台首脳会談も実現しなかった。高成長が続いた経済にもかげりが見えている。つまり最近の習政権は、内政も外交も八方ふさがりなのだ。そんな中、安倍首相に笑顔を見せたら、国内から総スカンを食いかねない。だから、あんなにシブい顔をした。

要は、日本を敵にするしか方法がないのだ。日本と中国を共に愛する私にとっては不幸なことだが、中国にとっては環境汚染対策も経済成長も日本なしでは何も進まないのが本当のところ。いくらケンカしても、自分の得になるなら誰とも仲直りする歌舞伎町案内人を見習って、わが習主席も安倍首相と「手打ち」してほしいのだが……。


本日の新着記事を読む