「特殊詐欺」という言葉をご存知だろうか。いわゆる振り込め詐欺を含む詐欺犯罪を日本の警察はまとめてこう呼んでいるのだが、この特殊詐欺の被害額が今年は上半期だけで268億円に達している。年間で過去最悪だった昨年の489億円を上回るペースで、このままでは今年は500億円を超えるかもしれない。

日本人の老人をだます犯罪だから、日本人の犯人たちは日本にいて電話をかけている……と思うかもしれない。あまり知られていないが、振り込め詐欺で「掛け子」と呼ばれるだまし役の犯人の中に、中国から電話をかけているヤツらがいる。

中国で大きな拠点があるのは福建省。ヤクザや不良、あるいは職にあぶれた男たちが、
「いい仕事がある」「タダで中国に行ける」
といった甘い言葉でスカウトされるケースがほとんどだ。日本と中国に精通する人材として、中国残留孤児やその家族が関わるケースもあるようだ。

わざわざ中国から電話をかけるのは、犯人が中国にいると、日本の警察が手を出せないことを犯人グループが知っているから。詐欺電話の拠点は中国だけでなく、タイやベトナムにも拠点はある。ただし、彼らが電話をかけるのは日本でなく、中国も数多い。少額融資の広告を中国で出し、その保証金を振り込ませる手口でカネをだまし取っていた事件が数年前、中国当局によって摘発された。

実は私も4年ほど前、振り込め詐欺にだまされそうになったことがある。中国人の友人を名乗る男から、
「困っている。1万元(約20万円)を至急送金してほしい」
と電話がかかってきたのだ(もちろん、すぐその本人に連絡を取り直して詐欺だと見破った)。

「環球化(グローバル化)」の今、犯罪は軽々と国境を越える。日本にいるから安心だと高をくくっていたら、中国からの詐欺電話に財産を根こそぎ持っていかれることになる。


本日の新着記事を読む