人生に役立つ勝負師の作法 武豊
縁で出会った馬とともに栄光を目指す


世の中にはいろんな縁があります。
良縁。奇縁。血縁。悪縁。
まだまだ、あります。
縁を結ぶ。縁を切る。縁がない……。

人と人の間にさまざまな縁があるように、馬と馬、馬と人の間にも、目には見えない縁がたくさんあることに気づかされます。

昨年の年度代表馬ジェンティルドンナの引退式に、3人のジョッキーが同じ勝負服をまとい、4万人のファンの前に並びました――最後の手綱を取った戸崎圭太騎手。桜花賞、秋華賞、2012年のジャパンカップのパートナー、岩田康誠騎手。オークスにまたがった川田将雅騎手……。

縁あって一頭の馬と出会い、デビューから引退までをともにすることもあれば、縁に恵まれ、ただ一度のチャンスで栄冠を手にすることもある――競馬って本当に面白いなと思います。

シヨノロマン。
彼女は、デビュー2年目の僕が初めて牝馬三冠に参戦したときのパートナーでした。これも縁あってのこと。「桜花賞」2着、「オークス」5着、「エリザベス女王杯」2着でした。
「桜花賞」では、大先輩、河内騎手が騎乗したアラホウトクに敗れ、「エリザベス女王杯」では、ミヤマポピーに敗れました。
どちらも、ゴール直前、「勝った!」と心の中で快哉を叫んだ瞬間、足をすくわれたレースで、勝負の厳しさと悔しさを教えてくれた馬でした。

そして、この「桜花賞」の中に、その後、縁で結ばれることになる一頭の馬がいたのです。
彼女の名前はリキアイノーザン。
アナウンサーの方が、
「第48回桜花賞、第一コーナーに殺到する18頭でありますが、さぁ、何が行くか?シヨノロマンが好スタート。その外からアイノマーチ。そしてスカーレットリボンが3番手。これをかわして"超特急"リキアイノーザンです!」
と称したほどの快足馬です。

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