いよいよ日本は本格的な入試シーズンに突入した。中国では秋に新学期が始まるため、大学入試は毎年6~7月にかけて全国一斉に行われる。この統一試験「高考」で好成績を収めるかどうかはその子の一生を左右するので、親も子もかなりヒートアップする。そしてヒートアップするあまり、中国では入試でカンニングが横行しているのだ。

受験生が耳に極小のイヤホンを入れ、試験会場の外にいるカンニング支援業者から無線で解答を聞くのは基本中の基本。学生たちはペンや定規、消しゴムなど文具だけでなく、メガネやベルトに仕込んだメッセージ受信機で外部から解答を受け取り、なんとか高得点を取ろうとする。スパイツールの充実ぶりは、あのジェームズ・ボンドも顔負けだ。

学生たちが不正に走るのにはそれなりにワケがある。中国では、「重点大学」と呼ばれる一流大学に入れなければ、その後は経済的に厳しい人生が待っている。いい企業に入ったり、儲かるビジネスをするためのコネを掴めないからだ。

学生の間の不公平もある。都会に働きにきた貧しい出稼ぎ農民の子供たちは、都会の子供に比べて明らかに教育条件が悪い。彼らが一発逆転を狙おうとすれば、自然とカンニングに頼ることになる(不正を働くのは、もちろん裕福な富裕層の子供にもいる)。学校側も会場周辺で無線を邪魔する妨害電波を出すなど不正防止策に取り組んでいるが、いかんせん学生側に罪の意識がないので「いたちごっこ」になっている。

約1400年前に始まった官僚登用試験の「科挙」でも、試験の解答を極小の本に極小の字で書き込む手法でカンニングが行われていたらしい。1400年の歴史を持つ筋金入りの中国人のカンニング習慣をなくすのは、政治家の汚職や愛人問題をなくすのと同じくらい難しいだろう。


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