いきなり結論からいうと、バターとマーガリンの根本的な違いは原材料にある。バターは牛乳から作られる「天然の乳製品」だが、マーガリンは油脂に発酵乳や塩を混ぜて作られる「加工食品」だ。
バターは「自然の動物性の脂肪」で、マーガリンは「人工的な植物性の脂肪」ともいえる。
大豆油やコーン油といった植物性油脂が8割以上のものをマーガリンと呼ぶ。ちなみに植物性油脂の含有量が8割未満のものはマーガリンではなく、厳密には「ファットスプレッド」という分類になる。いちばん有名なマーガリン「ネオソフト」は脂質7割程度なので、じつはマーガリンではなくファットスプレッドなのだ。
●バターの代用品として発明されたマーガリン
マーガリンが生まれたのは、19世紀のフランス。当時、普仏戦争でバターが不足していたフランスで、ナポレオン三世が「バターの代用品」を公募したところ、ある科学者が牛脂に牛乳を混ぜて固めたものを提案した。これがマーガリン誕生の瞬間だ。
マーガリンの由来からして、バターと似ているのは当然のことだったのだ。
●どっちが美味い?
バターとマーガリンを同時に食べ比べたりはなかなかしないものだが、風味が豊かなのは動物性のバターのほう、という意見が圧倒的だ。マーガリンもお菓子作りに使えるのだが、バターで作ったほうが美味いという人が多い。
むりやりラーメンで例えるなら、バターが濃厚トンコツで、マーガリンは魚介系といった感じだろうか。
値段でいうと、もちろんマーガリンのほうが安い。
・おなじみのマーガリン類:雪印「ネオソフト」は160gで希望小売価格175円。
・おなじみのバター:雪印「雪印北海道バター」は200gで希望小売価格393円。
同じ量だとすると1.8倍くらいバターのほうが高いのだ。
●マーガリンはほんとに危険なの?
健康に気をつけている人なら「トランス脂肪酸がカラダに悪い」という話はご存知だろう。そして、マーガリンにはこのトランス脂肪酸が多く含まれている。
トランス脂肪酸とは、植物油を高熱で処理したときにできるもので、つまりマーガリンの製造工程で必ず生まれることになるシロモノ。
摂りすぎると心筋梗塞のリスクが高まったり、肥満や成人病にもなりやすい、という調査報告が上がっていて、世界中でトランス脂肪酸を規制する動きがあるのは事実だ。
とはいえ、あくまで「過剰摂取は良くない」ということであって、朝食でパンに塗って食べるくらいなら問題ない、というのが日本政府の公式見解となっている。摂りすぎると体に悪いのはバターも同じである。
●マーガリンはどうなる?
人気ブランド「ネオソフト」も厳密にはマーガリンではないように、現在は脂質を減らしたヘルシータイプが主流だ。ファットスプレッドという名称はまったく浸透していないので、こういったものはマーガリン類とも呼ばれる。
また最近では「バター風味」のマーガリンが人気を集めている。「ネオソフト コクのあるバター風味」など、バターの代用品であることをアピールしているものも多く登場してきている。ただし風味とはいっても、バターが入っているわけではない。なかにはバターを加えたことをウリにしているものもあるが、ほとんどは別の原料でバターの味や香りを再現した、というもの。ちなみにこの「ネオソフト コクのあるバター風味」も脂質8割以上のれっきとしたマーガリンだ。
バターとマーガリンは、似ているようでけっこう違う。親戚のようで、実は血縁関係はなかった、みたいな関係かもしれない。これを機会に食べ比べしてみてはいかが。