頭髪に関する話題は、ほぼタブーなのが日本の社会。だが、男だったら誰だって、本当のことを知りたいのだ。

「外国人は髪や肌の色のせいか、ハゲてもカッコいいんだけど、日本人は落ち武者みたいでイヤだよね」
と語るのは、"天才"として知られるプロレスラーの武藤敬司氏(52)だ。

もともと長髪の二枚目レスラーとして活躍していた武藤氏だが、20代後半からファンの間で"毛の量"についてささやかれるように。
「試合は裸だから、つかむ場所は髪の毛しかないんだよ。倒れてると、相手が髪の毛をつかんで引っ張るわけ。引っ張られるスピードに、いかに早くついていくかが重要だったね(笑)。あと、試合中に倒れてると、相手が俺の髪の毛を踏んでいる。気づかずに立とうとしたら、そのままドバッと抜けたりしてさ。どんな技よりショックが大きかった(笑)」

そんな武藤氏が、2000年大晦日、大阪ドームでの試合でスキンヘッドで現れたのは、周知のとおり。
実は本誌記者(55)も、若い頃から薄毛に悩み、武藤選手の姿に力づけられた一人。そこで今回は、誰もが知りたい「ハゲの真実」30を、識者に聞いてみた。

では、そもそも、なぜハゲるのか?
前頭部や頭頂部が薄くなる、いわゆる「男性型脱毛症」は、早い人だと20歳頃から、遅いと40代で、3人に1人が発症するという(欧米人は2人に1人)。公益社団法人日本毛髪科学協会の山口智江研究センター副センター長が解説する。
「思春期を迎えると、体内で作られる男性ホルモンが増え、ヒゲが硬毛化を起こすなど体全体が男らしくなります。ところが、同じ男性ホルモンが前頭から頭頂部の毛を生やす毛乳頭細胞に入ると、5α‐DHTといういっそう強力な男性ホルモンに変化し、その部分の軟毛化が起きるのです」

これが「ハゲのメカニズム」だが、同じ男でもハゲる人とそうでない人がいるのはなぜか。
「一番の理由は遺伝ですね。ご自分の父親や、祖父がハゲている人は、男性型脱毛症になる確率が高いんです」

前出の武藤氏も、親戚一同ハゲているため、いずれ訪れる"運命"を、20代の頃から覚悟していたのだと言う。
「ただその当時、会社の売り出し方が二枚目路線だったから、"ハゲちゃいけない"って、いろいろ抵抗はしたんだよ。マッサージに行ったり、養毛剤をつけたりシャンプーのいいのを使ったりしてさ。効果があったのかなかったのか、スキンヘッドにしちゃったからわかんないけど(笑)」

親や先祖がハゲなら、自分もやっぱり……!?
そう肩を落とす人に、『やってはいけない頭髪ケア』(青春新書)など頭髪関係の著書も多い、全国理容連合会名誉講師の板羽(いたば)忠徳氏(理容師)が希望をもたらしてくれた。

「そんなことはありません。父を含め、私の親戚は50代でハゲている人が多かったんですが、私は今もフサフサですから」
確かに板羽氏は、剛毛アフロヘアで、とても70代には見えない。
「脱毛の原因は遺伝だけではありません。食生活のアンバランスや、精神的なストレス、そして間違った髪の手入れなどもあります。私のこの髪は、そうしたことに注意してきた結果なんです」

現在はそこそこフサフサの人でも、油断は禁物。このような原因が加われば、薄毛の兆候が現れる時期や進行の度合いが早まるのだという。
「特に油断禁物なのはヒゲや体毛が濃い人。男性ホルモンが多い分、よりハゲやすい。安倍首相や作家の五木寛之氏などは、髪がフサフサでもヒゲが薄いから、よほど不摂生しないかぎり大丈夫でしょう。また、自分で頭皮をマッサージしてみて、頭皮が固くて動きにくい人も要注意です。それだけ血流の流れが悪く、毛髪の成長を妨げているからです」

ここで気になるのが、少なくなった髪のお手入れ方法だ。
「適度な皮脂は、頭皮の乾燥を防ぎ、また髪にツヤと潤いを与えてくれます。しかし、皮脂の量が過剰で酸化すると、脱毛を引き起こすことがわかっています」

正しくシャンプーしないと、この「過剰な皮脂」が取れないことが多いのだ。
そこで板羽氏が勧めるのが、自身が「髪様シャンプー」と名づけた頭の洗い方。
「第一に、シャンプーは、頭皮に刺激の少ない弱酸性のものを使うこと、また、過剰な皮脂は毛穴に詰まってなかなか落とせないので、シャンプー前にクレンジングオイルでマッサージし、毛穴の脂を溶かして浮き出させることが大事です」

クレンジングオイルは、ツゲ科の多年草から抽出されたホホバオイルがお薦めだという。
「マッサージの際は、頭皮にオイルを揉み込んだら、蒸しタオルを頭に巻き、10分ほど置きます。シャンプーは、指の腹でゴシゴシこすり洗いするのではなく、指頭を頭皮につけ、頭皮を動かすようにするのがポイントです」

なぜ、指の腹ではダメかというと、
「髪の毛は約5年で自然に抜け落ち、新しい毛が生えてきますが、新生毛はきっちりと頭皮に根付いていないため、指の腹でこすると抜けてしまうから」
だという。

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