3年前、桜庭和志が新日本プロレス参戦を表明した夏の日、私はツイッターでこうつぶやいた。

「桜庭の新日登場はイチローのヤンキース移籍に似ている」。

イチローもその夏新しい環境に変わった。両者にはワクワクする気持ちはもちろんあったのだけど、それ以上に起用法が意外と難しそうに感じた。

でも世界を驚愕させた天才が同じ時期に環境を変え、キャリアの後半で勝負を賭ける。我々ができることは注視することだけだと思い直した。

そしてイチローは今年からマイアミ・マーリンズに移籍。41歳のレジェンドが若いチームメイトたちと盛り上がる様子が報道されている。日本のメディアが驚くほど明るいイチロー。

バットもグラブもスパイクも色を変え、今までのイメージをぶち壊す勢いだが?という質問に、

「チームを移るというのは、そういうチャンスでもあります。誰が見てもわかりやすいタイミングで何かを変える。そこを逃してしまうとできなくなります」(Number「イチロー主義」)

変わらなきゃ、というイチロー。

では桜庭和志のこの3年間はどうだろう。桜庭の場合は、まず問われたのは本人よりファンのほうだったと思う。桜庭を「どう見るのか」という。

私は桜庭の見方に関しては「変わらなさ」を選んだ。

引き続き勝負論にこだわってみようと思ったのだ。とにかく懸命に応援してみようと。

イチローのヒットを期待するように、桜庭が新日本プロレスで活躍することを必死に応援すればいい。勝った負けたで一喜一憂してみよう、ファンのほうこそ勝負論にこだわってみようと。

しかしそれは、「最強」という概念よりも「最高の興行」がファンに評価されている現在の新日本プロレスの会場で成り立つ観戦態度なのだろうか。そこが不安でもあり興味でもあった。

新日へ参戦してから最初のビッグマッチと言っていい東京ドームでの中邑真輔戦(2013年1月4日)は会場中がハラハラドキドキ。一喜一憂の「最高」の試合になった。考えてみれば桜庭は格闘技のリングで「最強」「最高」のどちらの成分も提供していた男だ。このまま新日本でも「最強」「最高」を両立させるのか?

しかし、そのあとの桜庭はどこか落ち着いていた。淡々とした物腰は桜庭の魅力だが、新日本のリングではうまく作用していないように見えた。

そう思っていたら、先日おっと思う瞬間があった。柴田勝頼とのタッグ対戦中、桜庭が久しぶりに「怖かった」のだ。

柴田とは3年前に新日本に一緒に参戦表明をした間柄。柴田はこの3年間でどんどん居場所を開拓している。

そんな柴田に対して複雑な思いが桜庭にあってほしい。少しでもイラッとした気持ちがあってほしい。いちばん手ごろな燃料になると思うのです。観客も今までよりずっと桜庭を「見やすく」なる。

ということで桜庭と柴田の今後の闘いには注目です。


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