桜子は、うわー、本当に霊能力者っているんだわと感心した。まさに春樹がいいそうなことだった。生きている頃は、俺は一度も殴ってないといい張っていたのだった。

死んでも人は変わらないんだと、寂しくもあり怖くもあり、なんだかちょっと笑ってしまいそうにもなった。彼の肌とベッドでの行為が、少しなつかしいとすら感じた。
 
その帰り道、桜子は横断歩道の向こうに春樹を見た、と思った瞬間にそれは目の前に飛んできて、彼女の頬を殴って消えた。確かに殴られた衝撃と痛みがあった。

以降、怪異はぱったりと消えた。春樹も本当に桜子を殴ったことで気が済んだか、気が引けたのだろう。妙なところでは筋を通す人だったもんねと、桜子は春になるたび彼を思い出し、少し涙ぐむ。

※この物語はフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。

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