米国の"虎の尾"を踏んだ首相

その理由について、政治評論家の浅川博忠氏は次のように解説する。
「彼以前に総理大臣を務めた岸信介や池田勇人、あるいは田中の次の福田赳夫などは"官僚出身"の政治家です。これに対して田中は、典型的な叩き上げ。その庶民的な出自に共感するという面があると思います」

加えて類まれな実行力。
首相に就任するや否や、懸案だった日中国交回復に着手、あっという間に交渉を成立させてしまう。
「また、地方の時代を先取りした『日本列島改造論』で、都市と農村の差を埋めようとしたのも先見の明がありますね」(浅川氏)

しかし一方で、このガムシャラな実行力が、"日本の親分"アメリカの虎の尾を踏むことにつながる。
「日中国交正常化は米国の"頭越し"だった。さらにエネルギー外交でも、米国一国頼みを改めようと、独自ルート開拓に奔走します。こうした政策が、ワシントンの逆鱗に触れたんですよ」(全国紙政治部記者)

田中は首相在任中、突如降って湧いた金脈問題で首相の座を追われ、米国の陰謀ともいうべきロッキード事件で、政治的に"抹殺"されてしまう。
「正念場の安保関連法案も年内妥結を目指すTPPも、"米国の言いつけ"。真の国益を実行できる角さんみたいな政治家は、もう出ないかもしれません」(前同)

現代の政治を憂う声が待望論を呼ぶのか。
「"フジヤマのトビウオ"古橋廣之進や、ノーベル物理学賞を取った湯川秀樹も入れてほしい」(毒蝮師匠)

「女優の原節子さんや劇作家の寺山修司さん、映画監督の大島渚さん……が、私にとって本当のヒーローです」(前出の小沢さん)

というように、昭和のヒーローも選ぶ人によって、さまざまかもしれない。しかし、ここに挙げた10人が、それぞれに昭和、あるいは戦後という時代に、まばゆい輝きを放ったことは、間違いないところだろう。

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