人生に役立つ勝負師の作法 武豊
秋の飛躍が楽しみな2頭の素質馬


一昨年のダービー馬キズナが、右前繋部浅屈腱炎を発症し、現役を引退することになりました。この秋、もう一度、あの強いキズナをみなさんにお見せしたいと思っていただけに、ちょっと……いや、言葉にできないほど残念です。

しかし、武豊の競馬はこれからも続きます。負けを引きずらないのと同じように、悲しむのも、彼の走りを思い出すのも、ひとりのときにすればいいことで、今は、間近に迫ったGⅠウィークに向けて、新しいパートナーと大きな勲章を目指し、さらに研鑽を積んでいきます。

ということで、これからの競馬について話をしましょう。今週末は、10月10日から12日までの3日連続開催。日曜日の11日は東京競馬場で、GⅡ「毎日王冠」(芝1800メートル)。翌月曜日は、京都競馬場を舞台にGⅡ「京都大賞典」(芝2400メートル)が行われます。このレースで僕のパートナーを務めてくれるのは、「毎日王冠」が、エイシンヒカリ。「京都大賞典」がラキシスに決まりました。

どちらも魅力あるパートナーで、さぁ、どっちの話を先にしようか迷いましたが、まずは今回が初コンビとなる角居厩舎のラキシスから始めましょう。
父ディープインパクト母マジックストーム昨年の「エリザベス女王杯」を制した彼女の力は、いまさら僕が解説するまでもありません。今年4月に行われた「産経大阪杯」のゴール前、キズナを突き放した脚は、さすが、GⅠホースです。

前々走「宝塚記念」が8着。前走「札幌記念」が5着と、不本意な結果に終わっていますが何かひとつ、きっかけさえあれば、復活してくれるはずです。彼女が得意とする京都コースに代わるのも、プラス材料。

87年トウカイローマン。89年、90年がスーパークリーク。91年、93年メジロマックイーン。96年マーベラスサンデー。05年リンカーンと、過去7度、このレースを制している僕も、京都は大好き。京男と京女のコンビで、みなさんの思いに応えたいと思います。

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