本気打ちではないので、よく打つ機種や好きな機種は避けました。稼ぐ目的じゃないですしのう。それにどうせ千円捨てるなら、普段は敬遠して打たない機種にしてみようかと。それが『えびすV』という連チャン機だったのです。予備知識は全くナシ。謎の連チャンモードに入ると大爆発するけど、普段はほぼ単発なのでまず勝てない。その程度しか知りませんでした。

 感覚的にはジャンボ宝くじをバラで1枚だけ買うようなもの。千円じゃ当たるはずがないし、消えゆくレトロ機種を記念に打っておこう程度のつもりです。ところが座ってすぐにリーチがかかってそのまま「777」が揃いました。後日調べると大当たり確率は1/225だったので、ちょっと運が良かったようです。

 ところが、わしの台のまわりに店員さんと常連が集まってきてザワザワ……。出玉1箱を出して帰ろうとしたら、その場の全員に制止されました。1箱でも5千円近い棚ボタ勝ちやのに……。半信半疑で再開すると数回転でまたも大当たり。その後もマシンガンのように当たり続けます。ギャラリー連中も「兄ちゃん、やるなー!」と大騒ぎ。

 どうやら大当たり60回に1回の割合で突入する極薄の「連チャンモード」を一発で引き当てたようです。足元の出玉は20箱を軽く超えてます。もう一度「777」が揃うと連チャンモードが終了してしまうらしいのですが、継続率は95%もあり、見た目では判別不能。店員さんは「とにかくヤメちゃダメ!」と鬼の形相で迫ってきます。そろそろ仕事に戻らなアカンのに……。とりあえず店を出て公衆電話へダッシュ。携帯電話なんてない時代ですからのう。10円玉1枚をブチ込んで会社に電話。

「課長、猛烈に腹が痛いので早退します」(ガチャ、ツーツー)

 これでヨシ。急いで台に戻って、そのままハンドルを握ること6時間。ずーっと当たりっぱなしの57連チャンで、出玉は驚愕の13万発!! 当時は2.5円交換だったので33万円になりました。たったの千円がこんなことになるとは恐ろしい。換金所も歌舞伎町みたいな歓楽街の細い裏路地の奥にあって、襲われやしないか怖かったです。

 この時が一度の大当たりで叩き出した最高出玉記録ですが、仕組みを理解してなければ味をしめてのめり込んでいたかもしれません。結局は20数年、パチプロとして全力で挑んでも、いまだに超えられないマグレ体験です。

 パチンコで夢中になり散財してしまう原因は、大勝ちの記憶が忘れられない場合がほとんど。本来はこづかいの範囲で楽しむ遊びです。自分を見失わぬよう、常に冷静さを保ちたいものですのう。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2