――人としての勉強、とはどういったことですか?

石川:人は一人では生きていけなくて、励ましたり、励まされたり、支え合ってみんなで手を取り合って生きていくものだと思うんですね。そういう経験を重ねていくと、自分からも力を発することができるようになると思えたんです。人は愚かな生き物なので、苦境とかに立ち向かったときに初めて見えるものがいっぱいあって。特に、苦しみの中にいれば、他人への感覚も敏感になるんですよ。

――なるほど。当時は、このまま芸能界を引退しよう、ということは考えなかったんですか?

石川:仕事の面ではカットアウトされたので、これから、どうやって生きていったらいいのかな、っていうのは確かに考えました。私は犬が好きで、トリマーになる夢が学生時代にあったので、それをやっている自分をイメージしようとしたのですが、どうしても湧いて来なくて。やっぱり心の髄の部分では“歌”という火種がずっと残っていたんです。私自身がそれを消そうとしなかったんでしょうね。いつかステキな風が吹いたときに、その火種がホワッと明るくなる、そう強く信じていたんだと思います。まあ、単に強がっていただけかもしれないんですけどね(笑)。

――石川さんは天性のシンガーなんですね。でも、実際、この病気で亡くなる方もいらっしゃいますね。

石川:そうですね。この病気は、完治することがないんです。今、私の病状は安定しているので、この安定をどうやって持続していくか、その部分で自分に対する責任感はいつも感じています。やっぱり、命は尊いもの。自分では軽々しく考えないようにしています。

――先日、乳がんで闘病中の小林麻央さんがブログを開設されましたね。

石川:やっぱり、人知れず苦しんでいるところがいっぱいあると思いますし、言葉を選んで皆さんの励みとなるように発する……そういう部分においては、強く自分を保つように努力をされているのかなって思います。私自身のことで言えば、自分の病気を受け入れたときに楽になったし、他人に対して話せるようになったんです。それまでは「どうして私が苦しまなきゃいけないの?」って否定的な考えばかりがあって受け入れられなかったんですが、その壁を乗り越えたときに強さは出てきたのだと思います。だから、小林さんみたいに自分の病気と闘っている真っ最中に、外に向けて言葉を発することができるというのは、並大抵のことではないと思うので、とても素晴らしいと思います。

――最後に、今後の活動について聞かせて下さい。

石川:私は、とにかく歌を歌いたい。これまでの経験、つらいことも楽しいこともすべてが私の歴史の中では必要なことだったと思うので、それらをすべて大切にしながら、これからも歌っていきたいです。

――デビューから、もうすぐ40年ですが、まだこれからということですね。

石川:年齢とかにあまりとらわれないようにしたいですね。なんでも遅いってことはないと思います。今できることを精いっぱい行いたいと思っています。まだまだ歌っていきます!

 アイドル時代と変わらぬ可憐な笑顔の石川さん。大変な体験をした彼女だからこそ、その発言には、真摯で熱いものが感じられました。これからも健康に留意して、ステキな歌を歌い続けてほしいと思います!

石川ひとみ いしかわ・ひとみ
1959年9月20日、愛知県生まれ。オーディション番組『君こそスターだ!』でチャンピオンとなり、78年5月にシングル『右向け右』でデビュー。81年『まちぶせ』のヒットにより『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす。87年に慢性B型肝炎を発症し、一年間休業後、復活。オリジナルCDをリリースし、現在はライブを中心に活動中。また肝炎や障害者福祉に関する講演活動も積極的に取り組んでいる。

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