プロ入り22年目にして2000安打を達成した中日・荒木雅博は96年のドラフト1位だが、いわゆる“外れ外れ1位”組だ。福留孝介(現阪神)、原俊介(元巨人)のクジに外れ、繰り上げのようなかたちで指名された。

 この年の高校生内野手は銚子商の澤井良輔(元千葉ロッテ・ドラフト1位)とPL学園の福留が東西の両横綱で、熊本工の荒木は彼らに次ぐ存在だった。“外れ外れ”とはいえ、さすがにドラ1は想定外だったらしく、熊本工の関係者は驚いていた。「中日のスカウトに“打力は?”と聞かれたので“6年先輩の前田智徳(元広島)クラスです”と答えた。ちょっとでも高く評価してもらおうと思ってね。まさか本当に指名してくるとは思わなかった……」

 俊足で好守。しかし非力。星野仙一監督(当時)が「なんで、あんな非力な選手をとったんだ」と怒鳴ったのは有名な話である。結局はスカウトの目が正しかったということだ。外れ外れ1位の成功例は荒木だけではない。2015年、16年と2年連続でトリプルスリー(打率3割以上、30盗塁以上、30本塁打以上)を達成した東京ヤクルトの山田哲人が近年の代表格だ。

 この年、ヤクルトがまず最初に指名したのが“ハンカチ王子”こと斎藤佑樹(北海道日本ハム)、外れるや大学球界屈指のサウスポー塩見貴洋(東北楽天)を指名したが、これにも失敗。そこで「将来性を買って」、履正社の内野手・山田に切り替えたところ、大当たりだったわけだ。皮肉なことに、2度も外れクジを引いた当時の監督・小川淳司は実は大変な強運の持ち主だったのである。

 このようにドラフトの収支決算は何年か経ってみなければ本当のところはわからない。だからクジに当たった外れたと一喜一憂する必要は全くない。

 ドラフトの成否を検証する上で、5年あるいは10年ごとに“ドラフト反省会議”を開いてみたらどうか。指名上手な球団、下手クソな球団がよくわかるはずだ。

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