今から25年前のこと――。こんな偶然が、世の中にはあるんだなあと思った。駅前の焼き鳥屋で、競馬新聞を見ながら酒を飲んでいたら、店主が、女将を軽く指さしてこう言ったのだ。「うちの女房、堀こまきという名前なんですけど、あしたの東京でデビューするスーパーミヨチャンという馬と、なんだか、他人じゃないんですよ」

 言っている意味が、競馬新聞を見て分かった。スーパーミヨチャンはこういう血統だったのだ。
父(ホリ)スキー
母(コマキ)ジョー
()で囲った部分をご覧になっていただきたい。つなげると「ホリ・コマキ」である。女将の名前と一緒だったのだ。ああ、これは面白いと、翌日単勝馬券を買ったところ、2番人気でゴール前抜け出し圧勝した。

 スーパーミヨチャンのオーナーである平尾昌晃さんにこの顚末を競馬場でお伝えしたら、「ちょっと待ってて」と、ご親切に色紙をくださった。「堀こまきさん江 一緒に頑張りましょう スーパーミヨチャン 平尾昌晃」とあった。何てやさしい人なんだろうと思ったことだった。

 我々の世代は、平尾さん作曲の『草原の輝き』や『グッド・バイ・マイ・ラブ』で潤いを与えられた。訃報に接し、どうか安らかにと手を合わせている。

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