だが、何が起こるか分からないのが甲子園。特に夏の選手権は、これまでも信じられないようなドラマが繰り返されてきた。この3校とて、安心はできない。「甲子園の短期決戦では、なんと言っても投手力が物を言います。絶対的なエースがいる高校や、投手層が厚い高校は、上位に行く可能性が高い」(デスク)

 まず、絶対的エースの存在が光るのは、仙台育英と木更津総合。「仙台育英の長谷川拓帆は、高2の春から頭角を現してきた本格派左腕で安定感も抜群です。また、木更津総合の山下輝は、187センチ・82キロの大型左腕で、最速は149キロ。波はありますが、実力は今大会ナンバーワンとの呼び声も高い投手です」(前同)

 かつての松坂大輔(現・ソフトバンク)を擁した横浜がそうだったように、絶対的エースが好調だと、チーム全体が波に乗るものなのだろう。だが、近年、増加傾向にある2人以上の力のある投手のいる学校も侮れない。「上位に進出したら連戦になり、優勝までの5~6試合を一人で投げ抜くのは負担が大きい。その場合、二枚看板の高校が有利と言えるのでは」(前出の持木氏)

 先に挙げた秀岳館はその典型なのだが、他にも注目を集めるエース級の投手が複数いる高校もある。「盛岡大附の平松竜也は、最速144キロの速球で勝負する右の本格派で、もう一人の三浦瑞樹は制球力が武器の技巧派左腕。関口監督は、相手によって2人を使い分ける戦術を取っています」(デスク)

 前橋育英も170センチ・69キロと小柄ながら腕を振りきってキレのある直球を投げる丸山和郁と、伸びのあるストレートと数種類の変化球で打者を翻弄する皆川喬涼の2人が交互に先発する。

 一方、ローテーションではなく継投で投手を起用するのが、高岡商と花咲徳栄。高岡商は、先発が長身から投げ下ろす直球と落差のあるカーブが武器の伏見拓真、抑えが148キロの速球派の山田龍聖というタイプの違う選手を継投させて相手を戸惑わせる戦術を使い、勝ち抜いてきた。

「花咲徳栄の清水達也は、プロのスカウトも注目する本格派右腕なんですが、彼は6回あたりからリリーフで登板することになるでしょう。コントロールと肩周りの柔らかさに自信を持つ右腕・綱脇慧が、試合を作るタイプの投手なんです。この継投で、埼玉大会は7試合を9失点に抑えています」(前同)

 ちなみに花咲徳栄では、西川愛也や、2年の野村佑希というプロのスカウトが目をつけている好打者にも注目したい。

 そこで、投手力以外にも目を向けてみると、上位を脅かす存在の高校はいくつもある。たとえば、昨年覇者の作新学院。「エースの大関秀太郎は、昨年の今井達也(現・西武)とは対照的。ずば抜けた球速こそありませんが、球の出どころが分かりにくいフォームで敵を翻弄します。意外と、こうしたクセのある投手を高校生は打ちあぐねるかもしれません」(同)

 昨夏の優勝時にベンチ入りした選手も残っており、偉業を達成した経験は何にも代えがたい。

 また、あの清宮率いる早実を破って甲子園の切符を手にした東海大菅生も、注目すべき高校だ。「4年連続で西東京の決勝に進出した実力はフロックではありません。西東京の決勝を見ても分かるように、そつなく点を取れるチームです。また、徹底した内角攻めかと思えば、外角に鋭いスライダーを投げ込んで打者を仕留めるエース・松本健吾のピッチングの評価も急上昇中です」(同)

 古豪・広陵もバランスの取れたチーム。実力派の捕手がチームの要となっている。「1年生の春からベンチ入りを果たした中村奨成捕手は、プロが注目する今年のドラフト候補。素早いスローイングと強肩の持ち主で、バッティングもいい。中井哲之監督は高校時代の小林誠司よりも素質は上と言っています」(持木氏)

 他にも投手ではスライダーのキレが素晴らしい俵森大輔、打者では俊足強打で広角に打てる羽月龍太郎などの有望な選手がいる、春季の九州王者・神村学園。俊足堅守で打力もある三拍子そろった注目株・西浦颯大が中心となっている甲子園常連校の明徳義塾など、実力派の高校はいくつもある。

 魔物が棲むといわれる甲子園。汗と涙のドラマの果てに、栄冠を手にするのはどのチームになるのか。白球の行方を見守りたい。

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