「がんの県民性」大分析~北海道から沖縄まで、生活習慣でこんなに違う!の画像
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 我々の命を脅かす“国民病”も、実は世につれ街につれ…。場所によって、実情には大きな差がある。各地域の特色を完全網羅で解説!

■喫煙・飲酒・塩分の“3大リスク”の摂取量などを大分析

 日本の国民病・がんに、実は“県民性”があることをご存じだろうか。「国立がん研究センターでは、各都道府県が実施する“地域がん登録”のデータを基に、部位ごとの罹患率や死亡率を公表しています。それらを分析すると、地域によって、かなりの違いがあることが分かったのです」(医療機関研究員)

 記事の最後に、その結果に基づいて本誌が作成した都道府県別の「がん死亡率」ランキングおよび日本人の罹患率が高いとされる4部位別の死亡率、さらに喫煙・飲酒・塩分という“3大リスク”の摂取の多さ、そして県による傾向の違いを掲載した。「この結果は、これまで各都道府県が独自に行ってきたものを、国が初めて全国版で集約したものです。現状は自治体ごとの調査の歴史や精度の違いによるバラつきがオーバーに反映された部分もあるため、これだけで怯えたり安心したりするのは禁物ですが、生活文化とがんの関わりを見るには有意義です」(前同)

■ワースト4位の北海道は、肺がんが目立つ

 たとえば、北海道はがん全体の死亡率においてワースト4位で、特に目立つのが肺がん(ワースト1位)だ。「厚生労働省の国民生活基礎調査によると、北海道は4人に1人が喫煙者で、全国1位の喫煙率なのです。喫煙は科学的にも肺がんをはじめ、食道がん、胃がん、肝臓がんなど、全身の臓器にがんを発生させることが証明されています」

 こう語るのは「国立がん研究センター」がん対策情報センター室長で、『がんで死ぬ県、死なない県』(NHK出版)の著書もある医学博士の松田智大氏だ。喫煙率が1位で、肺がん死亡率も1位。直接的な結果だが、このように、生活文化とがん要因がフィットしたものが“がん県民性”と言える。

■病院嫌いが多いワースト1位の青森県

 がん全体の死亡率が全国ワースト1位の青森県は、喫煙率は北海道に次ぐ2位。「青森は、全国で最もがんで“亡くなりやすい県”でもあるのです。考えられる理由としては、早期発見率が低いこと。医療機関まで車で15分以内に行ける場所に住む人が、県民の50%程度なのです。病院嫌いの方の多さも、発見を遅らせているのではないかという見方もあります」(前同)

 医療ジャーナリストの牧潤二氏も、この“医療過疎”についてこう語る。「青森県をはじめ、秋田県や鳥取県など人口が密集していない地域には、がん診療の拠点病院のない“空白地域”が多いのです。発見が遅れやすく治療を受けにくい地理的条件も、死亡率を高めていると言えます」

■アルコールやピロリ菌感染の危険度は…

 青森県は飲酒率も全国2位なのだが、喫煙同様、酒量の多い県もやはり、がん死亡率が高い傾向にある。「飲酒は肝がん、食道がん、大腸がんのリスクを高めることが分かっており、一日のアルコール量が多いほど、罹患リスクも高まります」(前出の医療機関研究員)

 成人一人あたりの酒類販売(消費)量全国1位は東京都だが、これは飲食店の多さが押し上げている値。清酒消費量が全国1位の新潟県では、酒とは関係の薄そうな胃がんが多い。これは、塩分摂取量の多さが理由と考えられるという。「東北、北陸など寒さの厳しい地域は、保存食なども含め、塩分が多めの食事になりやすい。ただ、塩分の摂取量が多いと胃粘膜を傷つけやすく、その結果、細胞が破壊され、胃がんの罹患率も高くなるのです」(前出の牧氏)

 胃がんの死亡率では、秋田県が全国トップ。ちなみに、罹患率で言えば全がんでも総合ワースト1位だ。秋田県民の塩分摂取量は、一日あたり11.1グラム。全国平均の10.4グラムよりも確かに多いが、塩分だけが問題とも言えないという。「岩手県も同等に塩分量は多いですが、胃がんは少なめ。塩分以外のリスク要因もあるのです。胃がんは、ピロリ菌の感染が主因とされ、塩分は菌の活動する粘液層を増加させると考えられます」(前出の松田氏)

 胃がんの原因の7割は、過去に井戸水を飲んだり、洗浄の不十分な野菜を食べてピロリ菌に感染したことによるものといわれている。「感染割合にも地域性があり、都道府県別の詳細データはないものの、山形県や新潟県は感染割合が高く、北海道、群馬県、愛知県では低いようです」(前同)

 ちなみに、前出のような感染経路のため、ピロリ菌感染者は高齢者ほど多く、現在の30代以下には、ほぼいない。つまり、胃がんは現状でも減り続けており、近い将来、世代交代とともに稀ながんになるというのが医学界の定説だ。

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