2016年5月放送のテレビ番組『ウワサの保護者会』(NHK Eテレ)で放送された「反抗期のない子どもたち!?」という特集で驚くべきアンケート結果が紹介された。番組が大学生300人にアンケートを行ったところ、54.7%が「反抗期がなかった」と回答したというのだ。もしかしたら、親世代と子世代では思春期に対する感覚が違うのではないか。そんな疑問から、現在の思春期の特徴を調査する。
■そもそも思春期とは何なのか?
思春期とは、性ホルモンの分泌とともに第二次性徴が現れて性欲的関心が高まる時期。男子は小学5年生頃(11歳前後)から、女子は小学4年生頃(10歳前後)からはじまり、自立と依存の葛藤、自己同一性の確立、自我の認識などを経て、心身ともに子どもから大人に変化する。
●男子の身体的変化
性腺刺激ホルモン「ゴナドトロピン」が精巣に作用して男性生殖器が成長。その後、陰毛や体毛(脇毛やすね毛、ひげなど)が発生し、精通や声変わりが起こる。さらに、成長ホルモンの分泌が増え、筋肉や骨格が発達してがっちりとした体型に変化。身長は思春期開始から25cm前後伸びるのが一般的。
また、代謝が活発になるため、体臭がキツいと感じる場合もあるが、思春期特有のものなのでそれほど気にする必要はない。ただし、思春期はワキガの原因と言われるアポクリン腺が活動しはじめる時期であることも忘れてはならない。
●男子の心理的変化
大人や社会に反抗する一方、異性だけでなく同性からも認められたいという願望を持つ時期。特に、心身が大人に近づくことで、同性の父親に対して対抗したり、見下すような態度を取ることがある。
《思春期の男子あるある》
- ・親や教師など身近な大人に対して不信感を持つ
- ・独立心が芽生え、家族と距離を保ちたいと感じる
- ・コンプレックスを持つようになり、集団生活にイライラを感じる
- ・性的な興味が湧き、性的好奇心を満たそうとする
- ・外見やおしゃれを気にする
- ・父親に対して特に反発する
●女子の身体的変化
性腺刺激ホルモン「ゴナドトロピン」が卵巣に作用して性ホルモンを発生。乳房が発達しはじめ、陰毛や脇毛が生え、初経が起こる。皮下脂肪がついて丸みを帯びた体つきになると同時に、子宮の成長によってウエストがくびれ、ヒップにボリュームが出る。身長は思春期開始から22cm前後伸びるのが一般的。
急激に体重が増加することもあるが、思春期の女子ならごく自然なこと。逆に思春期に痩せていると、不妊症や骨粗しょう症などのリスクが高まるため、極端なダイエットなどは避けるべきである。また、初経から1~2年は月経周期が安定していないため、身体的・精神的不調の原因がPMS(月経前症候群)によるものだと気づかないことも多い。
女子の心理的変化
女子は男子よりも現実的。友人や大人の言動を意識するようになり、激しく反抗するというよりも相手によって態度を変える傾向がある。親に対してはふてくされた態度や、ひねくれた行動を取ることが多い。
《思春期の女子あるある》
- ・感情のコントロールができず不安定になりやすい
- ・ホルモンの変化で無性にイライラする
- ・親よりも友人との関わりが密になる
- ・コンプレックスや劣等感で社交的になれない
- ・外見やおしゃれを気にする
- ・父親に対して抵抗感・嫌悪感・不快感を持つ
●思春期男女の体の変化と悩み
- ・皮脂や汗の分泌量増加 → 体臭、抜け毛、脂漏性皮膚炎など
- ・成長に伴う鉄需要の増大 → 貧血、頭痛、学力低下など
●思春期に関係する疾患
ホルモンバランスが乱れやすいため、肌荒れを起こしたり気分の起伏が激しくなったりする時期。一時的な不調であればそれほど気にすることはないが、不定愁訴(原因不明の頭痛、めまい、立ちくらみ、腹痛など)が続く場合は、急激な身体の成長に自律神経の成長が追いつかず、自律神経失調症や起立性調整障害を引き起こしている可能性も。また、周囲や異性の目が気になったり他人と自分を比較したりしやすい時期のため、うつ病、不安障害、摂食障害などに至るケースも多い。
もし、年齢に不相応な発育が見られる場合は、早期に性ホルモンが分泌される病気「思春期早発症」が疑われる。思春期早発症は、低身長や心理的ストレスの問題が大きい上に、脳腫瘍や副腎腫瘍などが原因で発症することもあるので、以下に当てはまる場合はすみやかに専門医を受診すべきである。
《思春期早発症が疑われるケース》
●男子
- ・9歳までに精巣が発育する
- ・10歳までに陰毛が生える
- ・11歳までに体毛が生え、声変わりがはじまる
●女子
- ・7歳半まで乳房がふくらみはじめる
- ・8歳までに陰毛や脇毛が生える
- ・10歳半までに生理がはじまる
■思春期の特徴「ニキビ」の基礎知識
思春期ニキビの原因は皮脂の過剰分泌。第二次性徴期になると、筋肉や骨の生成に欠かせない男性ホルモンが分泌されるようになるが、その男性ホルモンが皮脂の分泌を促進。思春期の肌は毛穴が小さく目詰まりやすいため、皮脂が溜まってアクネ菌が過剰に繁殖する。男子は重症化、女子は長期化しやすいが、ホルモンバランスが安定すると徐々にニキビは落ち着く。思春期ニキビの対策と治し方は以下のとおり。
《思春期ニキビの3大予防ポイント》
- ・余分な皮脂を取り除く
- ・肌を清潔に保つ
- ・角質をケアする
《スキンケアのポイント》
・アクネケア商品を使う
石油由来の合成界面活性剤が含まれる洗顔料や油分クリームはNG! ニキビ用の洗顔フォーム、基礎化粧品、スポッツクリーム(塗り薬)の中から自分に合うものを見つけるといい。
・洗顔は1日3回まで
洗いすぎは逆効果。朝晩の各1回、体育の授業や部活で汗をかいたときは+1回、計3回で充分。
・洗顔前に手洗い&予洗いする
手についた雑菌を落としてから洗顔スタート。あらかじめぬるま湯で素洗いしておくと洗顔の効果を上げることができる。熱いお湯や冷たい水は肌負担が大きいので避けたほうがいい。
・短時間でやさしく洗う
皮脂をしっかり落とそうと、時間をかけてゴシゴシとこすってはダメ。洗顔の手順は、
1)指先が触れるか触れないかくらいの強さで、小さな円を描くようにやさしく洗う。顔に泡をのせている時間は30~60秒が理想。
2)洗顔後はぬるま湯を手ですくい、肌にポンポンとつけるようなイメージでていねいに泡を落とす。
3)清潔なタオルを顔に当て、吸収させるイメージで水分をオフ。
という流れがおすすめ。洗い残し、すすぎ残しがないよう充分に注意!
・しっかり保湿ケア
肌が乾燥すると皮脂が分泌されやすくなるので、洗顔後は化粧水と乳液で潤いを補充すること。
・ニキビ対策に近道はなし
ネット上には、ケミカルピーリングや酢洗顔がよいという情報もあるが、肌荒れやニキビ悪化のリスクが否めない。
《ニキビを治す10の習慣》
- 1)枕カバーを清潔に保つ
- 2)顔やニキビを触らない
- 3)紫外線対策をして皮脂の酸化を防ぐ
- 4)顔や頭皮に整髪剤が触れないようにする
- 5)しっかり睡眠をとって皮膚の代謝を促す
- 6)皮脂を過剰に分泌させるスナック菓子や揚げ物はとりすぎない
- 7)ストレスを溜めない
- 8)便秘にならないようにする
- 9)ニキビをつぶさない
- 10)マスクや髪で顔を隠さない
■異性に興味を持つのは自然の行動
第二次性徴期を迎えた子どもは急速に成長し、自分自身を客観視できるようになる。そして以下のような様々な感情が複雑に絡み合って性的関心が高まる。
《思春期に起こる感情の変化》
- ・男と女の違いを認識すると同時に、セクシャリティを自覚する
- ・他者の視線が気になり、かっこよくなりたい、かわいくなりたいと思う
- ・承認欲求が高まり、モテたいと思う
- ・子どもっぽいことが嫌になる
- ・孤独や寂しさを感じやすくなる
- ・恋人の存在や性的な経験がステータスになる
- ・性的快感を覚える
いずれも思春期であればごく自然な感情であり、早すぎるということはないのだが、親は性に目覚めた我が子にとまどうかもしれない。同様に子どもたちも悩みながら「男として」「女として」の自分を確立し、異性を思いやる気持ちを育んでいるので、親には子どもの成長をしっかり見守っていてほしい。このタイミングで、性的欲求や恋愛願望を親から拒絶されたり頭ごなしに否定されたりすると、歪んだ性愛や性的倒錯を覚えるきっかけになることも。
●子どもがトラブルに巻き込まれないために
思春期の性的欲求は親の気づかないところで高まっていく。最近は、10代の子どもがインターネットやSNSなどの情報にまどわされてトラブルに巻き込まれたというニュースも多く、親の心配は増すばかりだが、思春期の子どもはいくら親が注意しても聞く耳を持たないだろう。むしろ、反抗心からダメだと言われたことをやろうとする子どももいる。子どもが正しい選択ができるよう、親は「ここぞ」というときに毅然とした態度を取ってほしい。
●子どものセクシャリティについて
思春期は、セクシャリティを自覚する時期であると同時に、とても傷つきやすい時期。クラスに1人以上はいるというセクシャルマイノリティは我が子かもしれないし、我が子の友人かもしれないので、性の対象が異性だと決めつけたり詮索したりせず、子どもから打ち明けてくれる時期を待ってほしい。
■「反抗期」はなぜ訪れる!?
それまで何の疑問も感じずに過ごしていた子どもも、思春期になると親や自分が置かれている環境を客観的に判断できるようになり、自立心や欲求の高まりから反抗的な態度を取るようになるもの。一般的には、暴力的言動(暴言を吐く、物にあたる、破壊する)、拒絶(口答えする、無視する、部屋にこもる)、不良行為(服装が乱れる、化粧や髪型が派手になる)などの言動が目立つ。
しかし、冒頭で述べたように、最近は反抗期がない子どもも増えている。例えば、幼い頃から意見を尊重されている子、親と価値観が一致している子は、反抗する意味がない。仲良し親子、一卵性親子、パパっ子、ママっ子など、呼び方はさまざまだが、親子との共依存関係が深刻化すれば、いつまでも親離れや子離れができない(=子どもが親以外と良好な関係を築けない、精神的に自立できない)ことが懸念される。また、抑圧や放任放置の環境で反抗できない子や、親以外の人間(自分、友人、オンライン上の他人など)を傷つけることで反抗心を処理している子は、心に大きなストレスを抱えている可能性がある。「反抗期がないと絶対に危険」ということはないが、社会問題となっているひきこもりやアダルトチルドレンの背景に思春期があることを忘れてはならない(※)。
※2016年ひきこもりの実態に関するアンケート調査報告書(特定非営利活動法人 KHJ全国ひきこもり家族連合会)より
反抗期は人格を発達させる上で重要な意義があり、大人への通過儀式。「親だけは自分のことを見捨てない」という信頼関係があるから子どもは反抗できるのだ。
●男子の対処法
反抗期の男子は暴力的な言動が多くなり、制止されるほど激化する。たとえ話の途中でも、男子がイライラしはじめたらしばらくそっとして、気持ちが落ち着くのを待とう。また、ダラダラと話し続けられたり、続けざまに複数のことを伝えられたりすると、突然なげやりになって最初の話ですらどうでもよくなってしまうので、簡潔に要旨を伝えるといい。
●女子の対処法
口が達者な女子は何を言っても反論するばかり。憎たらしいと思うこともあるかもしれないが、感情的になったり諦めたりせず、冷静に話し合ってほしい。問題は、無視もしくは反応が薄い女子の場合。はじめから話をするつもりがなく聞いていないことのほうが多いが、それでも周囲は話しかけ続けるべき。確実に伝えたいことは手紙やメールを活用するといい。
■思春期の子どもに対し、やってはいけない行動
思春期の子どもは不安定で扱いが難しい。親にとっても非常に悩ましい時期であるが、私たちにも同じように思春期があったはずだ。あの頃、イヤだと感じたことを子どもにやっていないか、大人にはこうしてほしいと思ったことをできているか、一度思春期の頃の思い出してほしい。
《思春期の子を持つ親の行動クライシス》
- ・過干渉/過保護
- ・無関心/放置
- ・親の不仲
- ・大人扱い/子ども扱い
- ・比較
- ・否定や決めつけ
- ・暴力/暴言
- ・身体的変化を指摘する
思春期の子どもに対して大人ができることといえば、「受け止める」「信頼する」「ときには放任する」くらいなもの。子どもが成長すると同時に、親も成長しなければならない。
■まとめ
思春期を迎えた子どもは、もがき苦しみながら、期待や喜びを覚えていく。時には過ちを犯すこともあるし、絶望することもあるだろう。でもそれが思春期なのだ。かわいい我が子を放り出すには不安の多い時代だが、親であっても子どもの成長を阻害してはならない。どんなときでも親は、子どもが自らの意思で自立への過程を切り開いていけるよう、大きな愛を持ってサポートするしかないのだ。